「過激派オペラ」江本純子インタビュー

「過激派オペラ」
江本純子インタビュー

青春と愛とエロを描いた処女小説で初メガホン

劇作・演出家の江本純子が、10年前に上梓した処女小説「股間」で初メガホンを取った。その名も「過激派オペラ」。「女たちが繰り広げる15分に1度の剥き出しの愛──。」というキャッチコピーそのままに、女だけの劇団・毛布教の劇作・演出家、重信ナオコと劇団員たちが、恋と友情とエロに彩られた青春物語を繰り広げる。「目の前のものをそのまま観てほしい」と語る江本が、作品に込めた真摯な思いとは?

取材・文 / 熊井玲
撮影 / 川野結李歌

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映画「過激派オペラ」
映画「過激派オペラ」
東京・テアトル新宿:2016年10月1日よりレイトショー
大阪・第七藝術劇場:10月29日より
愛知・名古屋シネマテーク:11月12日より
福岡・福岡中洲大洋:12月17日より
ほか、順次全国公開予定
解説
あらすじ

“女たらし”の女演出家・重信ナオコは劇団「毛布教」を立ち上げ、旗揚げ公演「過激派オペラ」のオーディションを開催。そんな中、1人の女優、岡高春に出会う。春に一目惚れしたナオコは春を主演に抜擢し、学生時代からの演劇仲間や新たに加わった劇団員たちと旗揚げ公演に向けて邁進していく。同時に、ナオコの猛烈なアタックにより春との恋愛も成就。絶好調のナオコは旗揚げ公演を大成功に終わらせ、すべて順調に進んでいるように思えたのだが……。

スタッフ

監督:江本純子
原作:江本純子「股間」(リトルモア刊)
脚本:吉川菜美、江本純子

キャスト

重信ナオコ:早織

岡高春:中村有沙

出水幸:桜井ユキ
工藤岳美:森田涼花
寺山田文子:佐久間麻由
麿角桃実:後藤ユウミ
松井はつね:石橋穂乃花
三浦ふみ:今中菜津美

夏村ゆり恵:趣里

ミツキ:増田有華
里菜:遠藤留奈
伊集院吹雪:範田紗々

仙川:宮下今日子
バイト先の女:梨木智香
松平了:岩瀬亮
劇場スタッフ:平野鈴

白塗りの男たち:<大駱駝艦>小田直哉、小林優太、金能弘、宮本正也

オーディション志願者:大井川皐月、木村香代子、妃野由樹子、藤井俊輔、巻島みのり、安川まり、吉川依吹、吉水りふ

不動産屋の女:安藤玉恵

桜田美代子:高田聖子

演劇は人と作っていくこと、そこに結び付けられた関係がある

──「過激派オペラ」は、2006年に書かれた江本さんの処女小説「股間」がもとになっていますが、そもそもは江本さんが映画を撮ることと、「股間」の映画化と、どちらが先に決まっていたのでしょうか?

もともとは、別の作品で監督をしないかと誘われていました。その流れの中で私の小説も候補に挙がって、プロデューサーがこれをやりたいとおっしゃって。それで、脚本も含めて私が監督することになったんです。

江本純子

江本純子

──ご自身の小説を映画化することは、すっと受け止められたんですか?

いえ、すっとではないですね。映画を撮ること自体は興味があってすごく撮りたいと思っていたけど、「股間」については、もう10年前の作品ですからちょっといろいろ考えちゃうところはありました。ただ、映画としてちゃんと新たな作品に生まれ変わらせることができるなら、やろうと思って。

──「股間」が出版された2006年というと、ちょうど毛皮族が本多劇場に初進出したり、メディアへの露出も増えたりして、非常に勢いに乗っている時期でしたよね。今回10年ぶりに読み返して、あの時期にこの小説を書かれていたことに、まずびっくりしました。

本当ですよね。私は今回、小説を一度も読み返してないんです。ただ、今自分で読んだら印象が全然違うだろうなと思います。どうでした? なんかこう、いけ好かないことが書いてありませんでした?(笑)

──いえいえ、そんなことはないですけど、ただ今の江本さんが10年前を振り返って書いているような印象を受けました。達観した目線で書かれているというか、劇団の人間関係の難しさとか、社会との軋轢といったことがストレートに描かれていて、今書いているとすれば納得なんですけれど、10年前のあの劇団隆盛期の渦中で書かれていたと思うとびっくりだなと。

小説の最終章では10年後、2016年のことを書いているんですけど、そこで書いたことは、今の私につながっていましたか?

──最近のインタビューやSNSの発言を通じて、私が感じている江本さんの“今”とはつながりを感じました。すごく……。

オーガニックな感じ?(笑)

──はい(笑)。なので、毛皮族であれだけ激しく活動している最中に、それを冷静に捉えている第三者的な目線をお持ちだったことがすごいなと。

どこかハリボテをハリボテと自覚してやってた部分があるんでしょうね。装飾してごちゃつかせて、でもどこか空洞っていう。

──そもそも小説は、ご自身が書きたいと思ってスタートしているんですか?

リトルモアの社長の孫(家邦)さんから「なんか書いてみない?」ってお話をもらって、「自分が知ってることを書けばいいんだよ」と言われたので、演劇の話にしました。小説はね、ずっと2作目を書こうと思ってるんだけど……10年経っちゃった。書くストックみたいなのは常にあるのに演劇をやってしまうんですよね。だから演劇やりながら書いてる人はすごい。私は演劇やったら演劇しかできなくなっちゃうから。

──脚本化にあたっては、どう書き進めていったのでしょうか?

江本純子

江本純子

プロデューサーが小説の中で面白かったと言ってくださったところや、こういうところは普遍的だから映画にしたいと言ってくださったところをピックアップしていきました。小説から持ってくるのはほぼモチーフだけで、一から書き直すつもりで進めました。

──江本さんご自身が残したかったエピソードや核にした部分はありますか?

“演劇を通じて人と関わってきたこと”という部分で、私が書くことはいっぱいあります。主人公にとって劇団員とのつながりも、お金を借りる誰かとの関わりも、恋愛も、すべて演劇のため。でも関われば関わるほど、「演劇のため」という目的を揺るがす、余計な自意識も育っていきます。欲や、見栄や、執着とか。すると気持ちのズレが生じて関係も壊れていくし、傷つけ合うし。それでも演劇は人と作っていくことだし、そこに結び付けられた関係がある。それは映画でも描きたいと思いました。

江本純子

江本純子

──女性だけの小劇場劇団・毛布教の物語ということで、観客としてはどうしても……。

毛皮族?

──はい、とリンクして観てしまう部分もあるかと思いますが、江本さんご自身はどんな距離感で脚本を書かれたんですか?

違うものだって思っています、まず。だから「これは毛皮族だ」って思って観る人もいるでしょうけど、そう思われたらつまらないなって思う。これは毛布教っていう集団の話として、映画の中で、その集団で起こっていることを観てほしい。「毛皮族の話?」と思って観ていたら、映画で描かれていることを見失ってしまうんじゃないですかね。とにかく目の前のものを観てほしいです。