「黒い十人の女」

「黒い十人の女」

「笑わせることが目的」
バカリズムは名作映画をどうリメイクしたのか

バカリズムが脚本、船越英一郎が主演を務める連続ドラマ「黒い十人の女」が9月29日に読売テレビ・日本テレビ系列でスタートする。原作は市川崑が監督した1961年公開の同名映画。9人の女と不倫しているドラマプロデューサーが愛人たちに殺害を共謀されるという奇妙なストーリーがスタイリッシュな映像で描かれており、未だに根強い人気を誇っている。

バカリズムはリメイク版の制作発表時、同作を“映画ファンが引くほど違う内容”へとリメイクすることを宣言した。お笑いナタリーでは、そんな彼の真意に迫るインタビューを実施。そこには原作へのリスペクトはもちろん、脚本仕事でもブレないバカリズムのプライドやこだわりが秘められていた。

取材・文 / 遠藤敏文、塚越嵩大
撮影 / 小坂茂雄

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木曜ドラマ プラチナイト「黒い十人の女」
読売テレビ・日本テレビ系
2016年9月29日スタート
毎週木曜23:59~24:54
概要
あらすじ

テレビ局の受付嬢をしている神田久未(成海璃子)は、ドラマプロデューサー・風松吉(船越英一郎)と不倫関係にあった。いけないことだとわかりつつ松吉から離れられないでいる久未にある日、1本の電話がかかる。その相手は松吉の妻と思われる女性だった。彼女と会う約束をした久未は翌日、指定されたカフェに向かい、待ち合わせ相手の佳代(水野美紀)と出会う。涙ながらに不倫を謝罪する久未だったが、佳代からは予想外の言葉をかけられることに。ここから松吉と愛人たちによる泥沼の恋愛模様が幕を開ける。

スタッフ

原作:和田夏十(映画「黒い十人の女」 監督:市川崑)
脚本:バカリズム
演出:渡部亮平
音楽:兼松衆
チーフプロデューサー:中村泰規
プロデューサー:汐口武史 / 河野美里
主題歌:CIVILIAN「愛/憎」

キャスト

船越英一郎 / 成海璃子 / トリンドル玲奈 / 佐藤仁美 / 佐野ひなこ / MEGUMI / 水上剣星 / 新田祐里子 / 水野美紀

原作とはほぼ違う

──まずは「黒い十人の女」のリメイクの話がきたとき、どのような心境だったのか教えてください。

おしゃれでカッコいい映画というイメージがあったので、いい話もらったなって感じですね。「見え方いいな」と思いました(笑)。

バカリズム

バカリズム

──ご自身のTwitterでは「映画ファンが引くほど違う内容」とコメントされていましたね。

最初にそう言っておかないと、相当反感買うだろうなと思って(笑)。原作のファンの方々が観ると「全然ちげえじゃねえか」っていうことになりかねないので。基本ほぼ違います。同じところは主人公の風松吉がテレビ局のプロデューサーで十股をしているっていう、それくらいなんですよ。映画版は世界観が完成されているし、それを無理やり現代劇で表現しようとすると寒くなっちゃうんじゃないかと思って。それだったら今の人たちが見て面白いと思う脚本を書こうと。

──台本を読ませてもったんですが、第1話からトリッキーな演出があって驚きました。

僕も改めて第1話の台本を読み直したんですけど、原作とは違うお話だと思ってもらうために、序盤からかましてますね。文句言ってきそうな人たちに割と早めに諦めてもらうために「面白いものですよ」って宣言してるというか。早いうちからお笑いの方向に振り切ろうとちょっと粋がってます(笑)。

ドラマは笑い声で優劣をつけられたりしない

──作品にはさまざまな笑いの要素が入っていますが、その中でも「特にここを見てほしい」という部分はありますか?

細かいネタをいろいろ挟み込んでいるので、そういうところに気付いてもらえるとうれしいです。終盤まで観たあとにもう1回序盤を観返したりすると、新たに面白い発見があると思います。

──バカリズムさんの普段のネタも、繰り返し見られるような“耐久性”を考えて作られてる印象があります。

結局、お笑いって最初見たときにピークを迎えるじゃないですか。「このネタは何回見ても面白い」という感想がありますけど、絶対に鮮度は衰えていきますから。だからこそ何回か見ないとわからないことを入れたくなりますね。ドラマに関しては特に。コントだとその1回が勝負ですけど、ドラマはお客さんがその場にいるわけじゃないし、笑い声で優劣をつけられたりしないんで。

「黒い十人の女」より。

「黒い十人の女」より。

──原作は50年以上前の映画ですが、リメイク版ではLINEでのやり取りのシーンが頻繁に出てきます。あのシーンはバカリズムさんの単独ライブの中にあってもおかしくないというか、テンポがよくてコントを見ているようでした。

コントですよね(笑)。会話劇はテンポよくしたほうがいいとスタッフとも話していて。でも監督さんにとって、あのシーンはすごく大変だと思います。

──ほかにも現代版だからこそ描けた部分はいろいろあったのでは?

原作は女性の言葉遣いに品があるんです。でもリメイク版では、今の時代に寄せていて、女の子でも男っぽいしゃべり方をしてますね。

──確かに。女の子から「~じゃねーよ!」みたいな男言葉が出てくるあたりは、バカリズムさんが以前に書いていた「架空OL日記」などと同じものを感じました。

文字面だけで見ると男みたいなセリフですけど、現実では女子もそういう言葉を意外と使うんですよね。台本とかでたまに「~しないわよ」みたいな口調を見かけるんですよ。文字面だけで女の子らしさを表現しようとするとそうなっちゃう。でもそういう言葉って今使わないし古臭いというか。だから極力そういうのは排除して、言いそうな言葉遣いを台本に書いてます。

──女性同士のケンカのシーンでは特に口調を男に寄せてますよね。

「~わよ!」みたいな口調にしちゃうと女性同士での罵りあいがチョロく見えちゃうんですよね。迫力がないというか。女性のキツさや迫力を出すには、ヤンキーマンガくらいエグくて汚い言葉を浴びせたほうがリアルなんじゃないかと思います。あえてそういう感じにしました。