米津玄師「ピースサイン」PR

米津玄師

米津玄師

あの頃の自分との対話

6thシングル「orion」に続く米津玄師のニューシングル「ピースサイン」は、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」新シリーズのオープニングテーマ。米津自身が「子供の頃の自分と対話しながら作った」と言うこの曲は、疾走感に溢れたビートとドラマチックなメロディ、「さらば掲げろピースサイン」という前向きなフレーズが1つになったアッパーチューンに仕上がっている。さらに作品には、幼少期の思い出を描いたアコースティックなロックチューン「Neighbourhood」と、2010年にハチ名義で発表した「沙上の夢喰い少女」のセルフカバー「ゆめくいしょうじょ」を収録。米津のルーツと幅広い音楽性が体感できるシングルと言えるだろう。

音楽ナタリーでは、米津にインタビューを実施。「ピースサイン」の制作を中心に、彼にとってのアニソン原体験、幼少期の思い出、さらにVOCALOIDとの関係などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

  • 7138

    1705

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
米津玄師「ピースサイン」
2017年6月21日発売 / Sony Music Records
米津玄師「ピースサイン」ピース盤

ピース盤 [CD+DVD+ピースリング]
2052円 / SRCL-9454~6

Amazon.co.jp

米津玄師「ピースサイン」ヒーロー盤

ヒーロー盤 [CD+赤ジュエルケース+ヒロアカTGCカード]
1620円 / SRCL-9457

Amazon.co.jp

米津玄師「ピースサイン」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / SRCL-9458

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. ピースサイン
  2. Neighbourhood
  3. ゆめくいしょうじょ
  4. ピースサイン(Instrumental)
ピース盤付属DVD
  • 「僕のヒーローアカデミア」ノンクレジットオープニングムービー

子供の頃の自分との対話

──ニューシングル「ピースサイン」の表題曲は、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」新シリーズのオープニングテーマ。オンエアと同時に大きな話題を集めていますが、この楽曲はどのように制作されたんですか?

もともと原型となる曲があったんです。それは昨年の春くらいに作ったんですが、そのあと「僕のヒーローアカデミア」の制作サイドからオープニングのお話をいただいて。以前から好きなマンガだったから「ぜひやりたいな」と思ったし、そのデモ音源ともすごく合うだろうなと。

──「僕のヒーローアカデミア」という作品に対してはどんなイメージを持っていました?

「週刊少年ジャンプ」の文脈をちゃんと受け継いだ新しい作品という印象ですね。少年たちの成長物語であり、そこに友情だったり、バトルの要素も加わって。子供の頃からそういうマンガが好きだったんですよ。自分たちの世代だと「NARUTO -ナルト-」「BLEACH」「ONE PIECE」などがそうですが、俺もずっと読んでいたので。小学生のときはマンガ家になりたかったんだけど、そのきっかけも「NARUTO -ナルト-」だったんです。その点で言えば、音楽よりも先にマンガやアニメが好きだったんですよね。

──アニソンも聴いてました?

はい。「デジモンアドベンチャー」という、自分たちの世代にとって金字塔的なアニメがあって。今25、26歳のヤツと話していると、必ずと言っていいほど「観てたよね?」って話題になるくらいの力を持った作品なんですけど、その最初のオープニングテーマだった和田光司さんの「Butter-Fly」という曲が本当に名曲なんです。今聴いても「デジモンアドベンチャー」のいろいろなシーンが蘇ってくるし、テレビを観ながら感じていたこと、考えていたことを思い出すんですよね。今回「僕のヒーローアカデミア」を担当することになったときも「『Butter-Fly』くらいのパワーを持った曲を作らなくちゃいけない」という思いがあって。

──米津さんが「Butter-Fly」から受け取った力を“ヒロアカ”を観ている人たちにも感じてほしい、と。

そうですね。「Butter-Fly」は王道のロックで、すごくエモーショナルな曲なんです。俺の中でアニソンと言えばその曲だし、「ヒロアカ」の主題歌に関してもある程度はそれを踏襲しようと。と言うか、その曲からは逃げられないと思ったんですよね。人間は子供のころに見聞きしたものに頼りながら生きていくという話もあるし、実際、子供の頃に好きだったもの、嫌いだったものは、その先の人生にずっと残ってるじゃないですか。自分と「Butter-Fly」は深く結び付いているし、音楽を作っている人間として、そこから離れることはできないんで。それは全然ネガティブではなくて、ポジティブな意味なんですけどね。

──「ヒロアカ」の公式サイトに「子供の頃の自分はどうだったろう?『ピースサイン』を作り始めてからはそういうことをよく考えます」とコメントしているのは、そういうことだったんですね。

「ピースサイン」は子供の頃の自分と対話しながら作ったんですよ。いろんなアニメを楽しみに観ていた自分に対して、26歳になった自分が「こういう曲ができたんですけど、どうですか?」って。「小学生の自分はなんて言うだろう?」と考えながら作ってたんですよね。「26歳のお前はそれが好きなのかもしれないけど、12歳の俺は好きじゃない」って言われたり(笑)。今の自分も小学生のときの自分も、結局はただひたすら自分でしかないんだけど、俺と同じようなことを考えている子供は、今の時代にもいっぱいいると思うんですよね。時代は変わるし、社会も変わるけど、子供が感じることには普遍的な何かがあると思うし、「ピースサイン」はちゃんと今の子供に届く曲になったんじゃないかなと。アニメのオンエアが始まってからも、ありがたいことに評判もよくて。自分が考えて、やってきたことは間違いなかったなって、今の時点では思ってますね。

自分って一体なんだろう?

──2曲目の「Neighbourhood」は生楽器の響きを生かしたロックナンバーです。「この頃ひどい夢を見る 子供の頃の風景」というフレーズで始まりますが、この曲も幼少期の記憶がモチーフになっているんですか?

そうですね。「ピースサイン」とはまた違うベクトルで子供の頃の自分と対話しながら作りました。「ピースサイン」はマンガ、アニメが好きだった自分との対話だったとしたら、「Neighbourhood」はもっと生活に根差した自分と話しながら作った感じなんです。思い出は甘美と言うか、人間って、つらかった出来事を記憶の中から削ぎ落としていっちゃうじゃないですか。この曲はそうじゃなくて、当時のつらかった出来事、くすぶっていた感情を抽出して、今の自分と対比させながら形にしていったんです。

──過去の自分と対峙するのって、キツい作業じゃないですか?

うーん……音楽にはいろいろな作り方があると思いますけど、俺はずっとそういうふうに音楽を作ってきたんですよね。この曲に限らず、昔の自分だったり、自分の中に存在しているものと対話しながら曲を書いてきたし、「自分って一体なんだろう?」というところから始まってるんです。もちろん「つらいな」と思うときもあるし、ある瞬間には「もうやめちゃおうかな」と思ったりもするけど、そうやって作ってるからこそ、自分と同じようなことを考えている人に届くのかなって。

──表現の根本は“自分”なんですね。

そうかもしれないですね。俺はずっと自分のことを歌ってきてるし、自分が経験したこと、見聞きしてきたことを音楽にしているんだけど、それが回り回って、結局は誰かのためのものになるんだろうなって。だって「あなたのためを思って言ってます」って提示されたものって、うさん臭くないですか?

──確かに。よく教師にも「お前のためを思って言ってるんだぞ」なんて言われましたが。

「お前のためを思ってる」という言葉は、自分の思惑通りに事を運びたいということでもあるんだろうなと思うんですよ。自分のためにやってるのか、相手のためにやってるのかは表と裏みたいなもので明確に区別はできないんだけど、音楽に関して言えば「自分のことを歌う」というのが一番誠実なんだろうと思ってますね。