斉藤和義×SPECIAL OTHERS(芹澤優真&柳下武史)

斉藤和義

自分なりに導き出した“遺伝”を歌う

斉藤和義が44枚目となるシングル「遺伝」をリリース。これを記念して音楽ナタリーでは、斉藤が「遺伝」について語るソロインタビューに加え、SPECIAL OTHERSの芹澤“REMI”優真(Key)と柳下“DAYO”武史(G)との鼎談を実施した。

かねてから交流があり、SPECIAL OTHERSの新作コラボアルバム「SPECIAL OTHERS II」に収録された「ザッチュノーザ」での共演を通じてさまざまなことを語り合ったという彼ら。鼎談では2組の共通点や「遺伝」の聴きどころなどについて語ってもらった。

取材・文 / 大谷隆之
撮影 / moco.(kilioffice)、佐々木コウ

  • 734

    214

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
斉藤和義「遺伝」
2017年2月22日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
「遺伝」初回限定盤
初回限定盤 [CD+オリジナルピンバッジセット]
2106円 / VIZL-1600
「遺伝」通常盤
通常盤 [CD]
1296円 / VICL-38300
収録内容
収録曲
  1. 遺伝
  2. 行き先は未来
  3. ひまわりに積もる雪

斉藤和義インタビュー

斉藤和義なりに導き出した“遺伝”

──新しいシングル「遺伝」は、ドラマ「下剋上受験」の主題歌になっていますが、この曲はどのように生まれたのでしょう?

このドラマは、中卒のお父さんと勉強嫌いの娘が塾に頼らず、2人で難関中学を目指す話です。要するに「中卒の親からは中卒の子供しか生まれない」という偏見とか負の連鎖を、自力で断ち切ろうとする親子を描いてる。原作とシナリオを読ませてもらうと、主演の阿部サダヲさんが奮闘している姿が浮かんできて。そのイメージを膨らませつつ、歌詞と曲をほぼ同時に書きました。あまり悩んだりせず、わりとすんなり降りてきた感じです。

──親子の愛がテーマですが、「遺伝するのは頭脳や容姿だけじゃなく、泥臭い生き方やあきらめない姿勢も受け継がれるはず」というメッセージも伝わってきます。

それって、このドラマとは無関係に、みんな漠然と感じていることだと思うんです。例えば僕自身の性格とか考え方にしても、遺伝してる部分もあれば、自分で親の背中を見て受け取ったものも確実にある。その境界線はいまだに謎ですけど(笑)。でもやっぱり、すべて引っくるめて“遺伝”なんじゃないかと。ドラマの主題歌をお借りして、そういう思いも込めてみました。

斉藤和義(撮影:佐々木コウ)

斉藤和義(撮影:佐々木コウ)

──ゆったりした3拍子のリズムと弦楽器を多用したアレンジが、切なく懐かしい雰囲気を醸し出していますね。音作りの面で何か意識したことはありましたか?

この曲を書いたとき、僕の中では少し昔っぽいフォークソングのイメージがあったんですね。曲自体もシンプルだし、強いて言えばアコースティック楽器の響きをきれいに届けることくらいかな……レコーディングでは僕がアコギとエレキギター、マンドリン、あとドラムを演奏して。もう1本のエレキギターとベースは、ツアーを一緒に回ったバンドメンバーに弾いてもらっています。

細野晴臣と林立夫の共演に「マジか!? やったー!」

──2曲目「行き先は未来」ではベースに細野晴臣さん、ドラムに林立夫さんが参加しています。1970年代に日本のポップスの礎を築いた伝説のバンド、ティン・パン・アレーのメンバーですが、この共演はどのような経緯で?

これは「超高速!参勤交代リターンズ」という時代劇コメディ映画のエンディングテーマで。観た人にいい意味での“おバカ映画”感が残るように、軽快なロックンロールにしようと思ったんです。でも日本のリズム隊でそのフィーリングが出せるミュージシャンって、実はほとんどいないんですね。うまい人はたくさんいるけど、それこそキース・リチャーズ(The Rolling Stones)が言う「Rockはあるけど、Rollはどうした?」みたいな話で。軽やかにロールするあのノリは、テクニックだけじゃ表現できない。でも“おバカ映画”の主題歌だからこそ、ノリは本物にしたかったんですね。

斉藤和義(撮影:moco. [kilioffice])

斉藤和義(撮影:moco. [kilioffice])

──そうすると、古いロックンロールのフィーリングが体に染みこんでいる人じゃないと難しい?

そう。で、僕の中で最初に浮かんだ名前が、細野さんだったんです。戦後、アメリカから入ってきたポピュラー音楽を浴びるように聴いて育った方だし。近年は1940~50年代の古いロックやポップスのカバーを掘り下げておられるので、演っていただけたなら、もう最高だなと。実はその少し前、たまたま対談させていただく機会があって。「何かあったらお願いします」という会話もしてたんですね。で、ダメモトでお声を掛けてみたら、意外にすんなりOKをいただけた。「細野さんがベースを弾くなら、ドラムは林さんしかないよね」と勝手に盛りあがってオファーをしたら、こちらも受けていただけて。なんだろう、内心「マジか!? やったー!」と叫びたい気持ちでしたね(笑)。

──実際のレコーディングはどのように?

まず最初に林さんと僕とキーボードの堀江(博久)が、スタジオで「いっせーの!」で演奏して。その音源に細野さんがベースを被せるという流れでした。うれしかったのは、林さんもやっぱりジャムるのが大好きな人だったんですね。僕がちょっとギターを鳴らすと、すぐドラムで乗っかってきてくれて。しかも延々と遊んでくれる。そうやって3人でセッションして、いい感じでグルーヴが出てきたところを録音してもらったので。2、3回(機材を)回しただけで、レコーディング自体はあっという間に終わりました。そこに細野さんがじっくりベースを付けてくれたんですが、これがまた「おお! 細野さん!」としか言いようがない素敵なラインで。あがってきた音源を耳にしたときは、ほんとうれしかったなあ。

──3分ちょっとの短いロックンロールナンバーですが、偉大な先人たちのグルーヴを受け継いだという意味では、実は斉藤さんのキャリアにおいてもエポックメイキングな作品になったのでは?

そう思います。大声で自慢したいですね(笑)。

ラファエル・サディークのズレ具合を目指した「ひまわりに積もる雪」

──3曲目「ひまわりに積もる雪」は、二階堂ふみさんと窪田正孝さんを起用した資生堂のWebムービー「逆さに降る雪」の主題歌として使用されました。ゆっくりたゆたうようなリズムが印象的です。

この曲は歌詞の世界観がわりと幻想的だったので、全体の雰囲気もちょっと不思議な感じにしたかったんです。ラファエル・サディークという黒人シンガーが10年ほど前に出した「The Way I See It」というアルバムが好きで。今もよく聴くんですけど、できればあの感じを出したかった。彼が面白いのは、とにかくベースとドラムがびっくりするくらいズレまくってるの(笑)。でもそれが、なんとも言えないグルーヴを生み出していて……。

──リズムの面ではそれを参考にしたと。

はい。ちょうどツアーが終わったあとだったので、バンドメンバーにスタジオへ来てもらって。ギター、ドラム、ベースのタイミングをどのくらいズラしたら近いフィーリングが再現できるか、いろんなパターンをさんざん試しました。この加減が難しくて、ほとんどの場合は単なる下手くそにしか聞こえない(笑)。結局、僕のギターとドラムは正確なリズムを刻み、ベースを思いきり後ろにしたら、ああいう浮遊感のある感じになりました。

斉藤和義(撮影:moco. [kilioffice])

斉藤和義(撮影:moco. [kilioffice])

──ちょっとこもったような不思議な音色も、ロマンチックな詞の世界にぴったり合っていますね。

音色では、“生演奏なんだけどサンプリングっぽい”感じを狙いたくて。これもいろいろ工夫しましたね。例えばドラムは一旦マイクで録ったものをギターアンプから出力して、わざと音を歪ませたりしています。アンプの種類を変えたりボリュームを調節したりするとまた印象が変わるから、それもいろいろ試して。生音は一切使ってないのかな。そうやってオケのサウンドを作っているときが、僕の場合、一番楽しいんですよね(笑)。