音楽ナタリー Power Push - リミックスアルバム「加山雄三の新世界」発売記念特集

リミックスアルバム「加山雄三の新世界」発売記念特集

加山雄三×PUNPEE×コムアイ(水曜日のカンパネラ)

異才たちの歳の差トーク

今年4月に80歳を迎え、音楽活動だけでも57年目を迎える加山雄三は、日本の歌謡曲 / ポップスシーンの中でまさに“大御所”という言葉がふさわしい。そんな彼の代表曲8曲を、スチャダラパーやECD、RHYMESTER、サイプレス上野といったヒップホップアーティストが中心となって再構築したアルバムが「加山雄三の新世界」だ。

このアルバムが、いわゆるサウンドにのみ手を加えたシンプルなリミックスアルバムと一線を画しているのは、加山の声やサウンドを素材として“料理”するだけで終わっていないところだ。参加アーティストたちはリミックスに自身のラップや歌を乗せることで、オリジナル楽曲に込められた世界観やメッセージに対して、時に寄り添い、時に反発し、時には自分の世界を塗り込め、新たな彩りをそこに加えている。その意味でも今作は“新世界”を提示する、リミックスというよりは“リビルド”といった表現がふさわしいチャレンジングな作品になっている。そしてそのチャレンジは、過去に加山が楽曲の中にサイケやボサノバなど、当時においては新奇的なアプローチを展開してきたチャレンジ精神ともつながっているだろう。

今回の特集では加山に加えて、「お嫁においで2015 feat. PUNPEE」を制作したPUNPEE、「海 その愛」のリミックスを手がけた水曜日のカンパネラのコムアイを迎えて、3人にこのアルバムに対する思いを語ってもらった。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎
撮影 / 小原泰広

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V.A.「加山雄三の新世界」
2017年3月8日発売 / ドリーミュージック
「加山雄三の新世界」
[CD] 2500円
MUCD-1380
収録内容
収録曲
  1. お嫁においで 2015 feat. PUNPEE
  2. 蒼い星くず feat. ももいろクローバーZ×サイプレス上野とロベルト吉野×Dorian
  3. 夜空の星 feat. KAKATO×川辺ヒロシ
  4. ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~ feat. スチャダラパー
  5. 旅人よ feat. RHYMESTER
  6. 夕陽は赤く(yah-man version)feat. RITTO×ALTZ
  7. 海 その愛 feat. 水曜日のカンパネラ
  8. 君といつまでも(Together Forever Mix)feat. ECD×DJ Mitsu The Beats
加山雄三 feat. ECD×DJ Mitsu the Beats / 加山雄三 feat. PUNPEE
「君といつまでも(Together Forever Mix) / お嫁においで 2015」
2017年3月10日発売 / NEW JAPAN RECORDS
「君といつまでも(Together Forever Mix) / お嫁においで 2015」
[アナログ] 1814円
NJR-003
収録内容
SIDE A
  • 君といつまでも(Together Forever Mix)feat. ECD×DJ Mitsu The Beats
SIDE B
  • お嫁においで 2015 feat. PUNPEE

スチャダラパーとの出会いが俺を大きく変えたね

──今回の収録曲の中では、THE King ALL STARSのアルバム「ROCK FEST.」においてスチャダラパーが制作した「ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~」、そしてPUNPEEさんがリミックスした「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」が先行して発売されていました。そこでPUNPEEさんに「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」を制作した経緯から教えていただければと思います。

PUNPEE 長野の音楽フェス「りんご音楽祭」の後夜祭に出演したときに、「おまえのDJは全然イケてねえ! お前の適当なスタイルが気に食わねえ!」って言ってきた奴がいたんですけど、それが「加山雄三の新世界」の仕掛け人の1人になったカレー屋まーくんで。彼が加山さんの裏方チームとつながってて、加山さんサイドが新しいことをしたいと計画してるときに「リミックスしてラップを乗せたらどうか」という話になったみたいで、僕に話がきたんですよね。

──因縁をつけられたのがキッカケと(笑)。

PUNPEE カレー屋まーくんとも今は仲よくなりました(笑)。

──加山さんはできあがった「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」を聴いた感触はいかがでしたか?

加山雄三 いい曲だったよ。やっぱり原曲が素晴らしかったのかなあと(笑)。

PUNPEE (笑)。

加山 それは冗談だけど、あんなにうまいこと手を加えてくれてさ、全然新しくなっちゃうから、すごいもんだなと。

左から加山雄三、コムアイ、PUNPEE。

左から加山雄三、コムアイ、PUNPEE。

PUNPEE 感想のお電話も直接いただいたんです。かなり緊張しましたけど。

加山 よくあんなに舌が回るな、早口で歌えるなと思ってさ。ホントに俺は呂律がダメだからね。俺にラップをやれとは誰も言わねえけどさ(笑)。

──ラップを聴かれたことはありましたか?

加山 あるさ、そりゃあ。

──失礼しました。

加山 ラップが出てきた頃に黒人のラップを聴いて、ビートとラップのリズムがズレてたりするのに、それが悔しいぐらいカッコいいのはなんでだろうと思ったんだよね。1回、映画のサントラでラップをやらされたことがあったんだけど(映画「メッセンジャー」挿入歌「Messengers Rhyme」)、どうしてもお経になっちゃって。だからその映画は2度と観る気がしないし、ラップをする気もなくなって。その映像は封印してたんけど、マネージャーが見つけてきやがって「やっぱりやらないほうがいいですね」って(笑)。

PUNPEE 探して観なきゃ(笑)。

加山 絶対にできないことも世の中にはあるんだなと思ったよ(笑)。だけど「ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~」を聴いて、日本人でもこんなにカッコよくラップできるのか、これは進化だなって思ったんだよね。だから、スチャダラパーとの出会いが俺を大きく変えたね。音楽の幅を変えてくれた。そして「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」でさらに音楽の進化を確信したね。たくさんのラッパーが参加してくれたこのアルバムを聴いて改めて思ったけど、よくあんな長い歌詞をみんな覚えられるよな。俺の歌なんて3行か4行だから(笑)。しかもその内容を心地よく相手に伝えられるのは、うらやましいと思ったよ、我々の時代にはなかったアートフォームだからね。

県会議員の謝罪会見がヒップホップアレンジされてて笑い転げたよ

コムアイ 加山さんは「お嫁においで 2015 feat. PUNPEE」のミュージックビデオにも、PUNPEEさんの彼女のお父さん役で出られてましたね。

加山 観たんだ、あれ。

コムアイ 観ましたよー。もし彼女のお父さんが加山さんだったら、どういう服装で行ったらいいのか、どういう応対したらいいのか、優しいとか怖いとかそんなこと関係なく、正解がわからないですよね、たぶん(笑)。でも、MVの出演のオファーを聞いたときって……。

加山 もう二つ返事で「OK!」だったよ。新鮮な気持ちでなんでもやろうって思ってるし、若い子から求められるのがうれしいからさ。

加山雄三

加山雄三

コムアイ それがすごいなー。そんなふうに考えられるなんて。

加山 俺は同世代と話しても話が全然通じない人間だから、若い奴と話してるほうが楽しいんだよ。それに、音楽ってのは時間を超える、時代を超える、国籍を超えるんだ。「ボーダー」を超えるのが、音楽の一番の役割だと思ってるんだけど、こういう孫みたいな世代の人たちが、俺の曲を通してそれを形にしてくれて、しかも様になって、YouTubeのアクセス数もいいんなら(笑)、本当にうれしいよ。

──YouTubeのアクセスも気になりますか。

加山 もちろんYouTubeも観てるよ。前に泣きながら謝罪会見した県会議員がいたじゃない。あの会見の動画が次の日に編集されて、ヒップホップアレンジみたいになってYouTubeに上がってるのを見て、笑い転げたよ。

──YouTubeに上がってるMAD動画もご覧になるんですか!

加山 笑ったもん! 面白えなーって。それに、今はこういう可能性も広がってるんだなって感心したよ。