ハナレグミ「SHINJITERU」PR

ハナレグミ

>涼やかな風景から立ちのぼるブルース

ハナレグミがニューアルバム「SHINJITERU」をリリースした。

堀込泰行、かせきさいだぁ、沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラ)、阿部芙蓉美など、前作に続き多彩な作家陣が参加した「SHINJITERU」。彩り豊かな楽曲に乗せて、ハナレグミこと永積崇は時に穏やかに時に力強く、持ち前の表情豊かな歌声を聞かせている。音楽ナタリーでは永積にインタビューを実施。アルバムの制作背景やここ最近の心境の変化などについて話を聞いた。

またインタビュー後半では、アルバムを制作するうえで多大なインスピレーションを受けたと言う4つの“SHINJITERU”を永積に挙げてもらった。

取材・文 / 宮内健
撮影 / SUSIE

ハナレグミ「SHINJITERU」
2017年10月25日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
ハナレグミ「SHINJITERU」

[CD]
3240円 / VICL-64847

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 線画
    [作詞・作曲:永積崇]
  2. ブルーベリーガム
    [作詞:永積崇 / 作曲:堀込泰行]
  3. 君に星が降る
    [作詞:竹中直人 / 作曲:坂本龍一]
  4. 深呼吸
    [作詞・作曲:永積崇]
  5. My California
    [作詞:阿部芙蓉美 / 作曲:永積崇]
  6. ののちゃん
    [作詞・作曲:永積崇]
  7. 消磁器
    [作詞・作曲:永積崇]
  8. 秘密のランデブー
    [作詞:かせきさいだぁ / 作曲:沖祐市]
  9. Primal Dancer
    [作詞:阿部芙蓉美 / 作曲:永積崇]
  10. 太陽の月
    [作詞・作曲:永積崇]
  11. YES YOU YES ME
    [作詞:永積崇 / 作曲:阿部芙蓉美、永積崇、YOSSY]
NHKみんなのうた
ハナレグミ と うんだらか楽団
「うんだらか うだすぽん」
NHKみんなのうた ハナレグミ と うんだらか楽団 「うんだらか うだすぽん」

2017年11月15日配信
SPEEDSTAR RECORDS

「SHINJITERU DASAI OYAJI」って言葉が浮かんできた

──今年3月からバンド編成では初となるライブハウスツアーで全国を回りました。ニューアルバム「SHINJITERU」には、YOSSYさん(Key, Cho)、伊賀航さん(B)、菅沼雄太さん(Dr)といったツアーを一緒に回ったメンバーを中心にしたレコーディングセッションが半数近くを占めています。

ああいう形でツアーを回れたのは、自分にとってすごく大きかった。ツアー途中の移動日にみんなでリハーサルスタジオに入って曲を書いたりセッションしたり、それを次のライブで試してみたりね。そういうメンバーと一緒に回ってる時間の中で、楽曲もどんどん変わっていって。だから今回のレコーディングは、今までとはまたちょっと違ってバンドと一丸になって作ったと言うか、もう少しフィジカルな感覚が含まれてるのかな。その一方で、前作「What are you looking for」のときにやっていたような、セッションしながらアレンジを固めて作った楽曲もあって。「秘密のランデブー」なんかは前作のレコーディングのときに録り終えてたんだけど、すごくいい曲だし、あまり時間を置かずに出さないといけない曲だと思っていたんです。あの曲をなんとか今年中に出したいなっていうのは、アルバムを作る1つのきっかけではありましたね。

永積崇(ハナレグミ)

永積崇(ハナレグミ)

──前作は心の深淵を覗き込むような印象が強い作品でしたが、今回の「SHINJITERU」は、一聴してどこか軽やかさを感じました。

確かに今回のアルバム全体に言えるけど、歌で熱く持っていかないっていうのをイメージして作ったところはあるかもしれない。以前は「こっち来いよ! 楽しいぜ、イエー!」みたいな感じで聴き手を引き付けるようなところがあったり、あるいは「おあいこ」みたいに聴き手の心に深く潜り込んでいくような感じもあったと思うけど、今回はもっとニュートラルな熱量にしたかったんです。結果、できたものは自分の中では、1stアルバムの「音タイム」(2002年)あたりの雰囲気にけっこう似てるかなとも思って。何より歌を聴き手と共有したくなるようなアルバムにしたくて。「音タイム」の頃に比べて、自分自身伝えたいことも増えたし、遊びたいことも明白になってきたところはありますね。

──「SHINJITERU」というタイトルは、どういうところから出てきたものなんですか?

特別、このタイトルが作品そのものを明確に説明してるというものでもないけど、単純に今のタイミングで「SHINJITERU(信じてる)」って言葉が、世の中のいろんなところに置いてあったら素敵なんじゃないかなって。そういうことをしたくて、自分の作品を使って遊んでみたんです。

──「信じてる」という言葉や感覚が、世の中から抜け落ちてるような印象がある?

なんか……信じるってことがバカバカしくなるような瞬間が最近多くない? 自分らが育ってきた時代から何かが大きく変わっていってるような。きっと父親や母親ぐらいの世代からしてみたら、もっともっと常識がカーブしてるように思えるだろうし。そういうことを繰り返していくのが歴史ってものなのかもしれないけど……でも、今はやっぱり危なっかしい時代になりつつあるのかな。面倒なことは考えないほうが楽だなってなりがちだし、ときどき責任みたいなものから手を離したくなるけど、離してはいけない、あきらめてはいけないなって。

──あきらめないし、そこでちゃんと考えるし、信じてると思うことが大切だと。

でも、「信じなきゃいけない!」とか強い意味を込めているわけでもなくて。まあ、半分寝ているときにパッと思い付いたタイトルなんです。「SHINJITERU DASAI OYAJI」って言葉がアルファベットで、ふと浮かんできて(笑)。気が付いたら四十代になってたけど、自分は歌い始めた頃から変わらず同じことをやっていて、そういう中でいろんな波があるけど、ずっと表現し続けてると「これは違うかな」と思ってたことに、「やっぱり正しかったのかな?」と気付けたりして。自分は単純に音楽が好きだし、音楽の力を信じてる。それだけなんです。だから余計な力を入れずに「SHINJITERU」って思いを作品に込めてみたんです。

芙蓉美さんの歌詞って、どこか少年性を感じる

──では、アルバム「SHINJITERU」収録曲からいくつか話を聞いていければと思います。まずは東京スカパラダイスオーケストラの沖祐市さん作曲、かせきさいだぁさん作詞の「秘密のランデブー」。クラブを2人でこっそり抜け出して、深夜の都会をランデブーするという、ロマンチックな歌になりました。

沖さんのメロディは、やっぱりすごいですよね。それはスカパラの「追憶のライラック」にフィーチャリングボーカリストとして参加させてもらったときにも感じて。沖さんのソロ作品でも何曲か歌わせてもらったんだけど、沖さんのメロディと自分の声はぴったり合うと思うんです。でも、沖さんが作る華やかで美しいメロディに自分の歌詞を乗せると、どこか世界を限定しちゃうところがあるような気がして。それで、この曲はシンガーとして歌うべき曲だなって思ったんです。そこで誰か作詞家の人にお願いしたいなって。この曲を初めて聴いたとき、クラムボンのメンバーなんかとツルんでた頃によく遊びに行ってたOjas Loungeを思い出したんですよ。

永積崇(ハナレグミ)

永積崇(ハナレグミ)

──SUPER BUTTER DOGのメンバーもよく出入りしてた、南青山にあったクラブですね。

そう。憧れと現実が交差してるような場所だったから、あの時代を知ってる同世代の人がいいなと。そこでかせきさいだぁさんに歌詞をお願いして。あの頃の、明け方に酔っ払って疲れて階段あたりに座り込んで、どこにも行くあてがなく心が浮遊してるようなあの感じが、言葉とメロディに合ってるって言うか……最近はクラブに行ってないから聴き手にどういうふうに響くかわからないけど、かせきさんはあの当時を振り返るっていうんじゃなく、メロディにイキイキと色のある言葉を乗せてくれた。俺はすごく夢のある歌だと思って。この歌を聴きながら、こういう雰囲気の子たちはいないかなって探したくなる(笑)。

──「ブルーベリーガム」は堀込泰行さんが作曲されています。堀込さんが参加するのは前作に引き続きのこととなりました。

前回のアルバムに収録した「無印良人」と同時期に書いてくれていた曲で。思いきりアル・グリーンの影響が出た演奏になりましたね(笑)。

──そして「My California」「Primal Dancer」の2曲はシンガーソングライターの阿部芙蓉美さんが詞を手がけていて。「YES YOU YES ME」では阿部さんと永積さんが歌詞を共作しています。

芙蓉美さんの歌詞って、どこか少年性を感じるって言うか。自分の声と芙蓉美さんの言葉ってきっと相性がいいんだろうなと思っていたし、彼女の中にある遊び心みたいなものもすごく好きなんです。それでいてどこか毒っ気もあって。今回、芙蓉美さんが詞を書いてくれた曲では歌入れにも立ち会ってもらったんです。歌の譜割とか言い回しとか、ものすごく細かく指摘してくれました。

永積崇(ハナレグミ)

永積崇(ハナレグミ)

──作詞をした方がレコーディングに立ち会うのは初めてですか?

うん。自分もそういうレコーディングをやってみたいと思っていて。初めてのトライでした。作詞家の中にも、どう考えてこの言葉を書いたか、主人公がどういう人かとか、漠然とでもイメージがあると思うんですよね。歌の中でもやっぱり主人公を立ち上がらせたいなって思ったから、芙蓉美さんと一緒に歌入れをしようと。ここはこっちの言い回しでとか、そこは言い切らないほうが含みがあっていいとかアドバイスをくれて。すごく勉強になったし、彼女の歌はこうやって緻密に作られてるんだなって知ることができました。