T.M.Revolution 西川貴教×「ゴースト・イン・ザ・シェル」

T.M.Revolution 西川貴教 × 「ゴースト・イン・ザ・シェル」

神山健治監督版「S.A.C.」シリーズに傾倒

西川貴教の考える“魂の所在”

士郎正宗の原作をもとに、数々の劇場アニメ、テレビアニメ、ゲームなどのメディアミックスが展開され、作品ごとに主人公・草薙素子への異なるアプローチがなされてきた「攻殻機動隊」。4月7日に、ルパート・サンダース監督によるこのシリーズのハリウッド映画版「ゴースト・イン・ザ・シェル」が日本公開される。

このたびナタリーではコミック、音楽、映画、お笑いの各ジャンルが連動して「ゴースト・イン・ザ・シェル」を盛り上げるインタビュー特集を実施。連載2回目となる音楽ナタリーの特集では「攻殻機動隊」シリーズの熱心なフォロワーである西川貴教(T.M.Revolution)に話を聞き、彼の考える物語の核、作品を彩る音楽の魅力などについて語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦
撮影 / 須田卓馬

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映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」
2017年4月7日全国公開
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」
解説
ストーリー

電脳技術が発達し、人々が義体(サイボーグ)化を選ぶようになった近未来。脳以外は全身義体の“少佐”が率いるエリート捜査部隊は、ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバーテクノロジーを狙うテロ組織と対峙する。上司の荒巻大輔や片腕的存在のバトーと協力し、捜査を進めていく少佐。やがて事件は少佐の脳にわずかに残された過去の記憶へとつながり、彼女の存在を揺るがす事態に発展していく。

スタッフ / キャスト

監督:ルパート・サンダース

原作:士郎正宗「攻殻機動隊」

出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、ピルウ・アスベック、桃井かおりほか

誰もが向き合わなければいけない部分をどう捉えるか

──西川さんと「攻殻機動隊」の最初の出会いは?

押井守さんが監督した劇場版(1995年「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」)からです。原作のコミックは後追いで拝見しました。押井さんの作品はその前の「機動警察パトレイバー」もそうでしたけれど、映像表現におけるプロダクションのカラーが非常に強い。キャラクターはもちろん、ないがしろにされがちな標識や看板など、背景の細かいディテールをすごく大事にされていて。独特のこだわりが非常に魅力的でした。

西川貴教

西川貴教

──押井監督以降も、神山健治監督の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズ、黄瀬和哉監督の「攻殻機動隊 ARISE」と、さまざまな作品が生まれていますが、それらもご覧になられましたか?

ええ、全部観ています。神山さんの「S.A.C.」シリーズも好きですね。これは押井監督の作品もそうなんですけど、「攻殻機動隊」という作品は一貫して魂の定義、つまり“ゴースト”と呼ばれる部分が一番重要なのかなと僕は思っているんです。果たして魂をどう定義するのか……記憶だったりスピリチュアルなものだったり、いろんな観点があるとは思うんですけれども、逃れられない人間の死のように、誰もが向き合わなければいけない部分をどう捉えるかということとも直結しているような気がして。

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」より。

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」より。

──魂の定義については本作品の根幹でもある大きなテーマですね。

今目の前にあるものが現実だと捉えているけれども、「果たして現実とはなんなのか?」ということは、小さい頃からよく考えていたんです。視覚的な部分とは違う概念的な部分……それこそ宇宙の創世であったり、この宇宙で自分はどういう位置にいるのか。あるいは漠然とある、死への恐怖、果たして本当に来世みたいなものがあるのか、みたいなことを。だから余計にこの作品で描かれていることに惹かれるんです。

現実化の瞬間に自分も立ち合いたい

──人間の人間たる所以はどこにあるのか、と。

魂の記憶を“ゴースト”って呼ぶ表現自体、言い得て妙じゃないですか。タブーとまではいかないにせよ、あまり公に語られることのない部分に触れている作品ですよね。むしろアニメだからこそ、そういうある意味不可侵な領域にも踏み込めるというのはあるのかもしれません。

──哲学的な踏み込み方がいくらでもできる作品です。

僕としては、哲学的なところに重きを置いた観方はしていないんですけどね。「本当に作品の中で描かれているような世界になるのかな?」とか、希望的な部分も加味して「そうなってほしいな」と思うことのほうが多いです。実際、海外では義手や義足の技術を競う大会も開かれていたりしますし。今後急速に発展するであろうそうした技術が、魂の在り様において果たして垣根を越えてくるのかという部分には大いに興味があります。

西川貴教

西川貴教

──実際に、原作で描かれたもので近い将来現実化されそうなものも少なくないですね。

戦後から現在までの短い期間の中に、身の回りのものがめまぐるしく進化しましたよね。小さな頃「こんなものがあればいいな、こうなったらいいな」と夢見たものを少なからず手にしたり体験できるようになっていることを考えると。そういう現実化の瞬間に自分も立ち会いたいですし、だからこそ僕はより作品に興味が湧いたんだと思います。

──義体やA.I.(人工知能)の進化に関しては、もはやフィクションの世界の話ではない。

医療技術が進むと、死生の定義自体が変わるかもしれないわけじゃないですか? 脳さえ生きていれば……みたいな。平均寿命も年を追うごとに延びていますし。またそれと同時に、個を認識する部分をどのように捉えるのかというところが今後の課題になるかもしれない。そして、そうなった場合に「何を糧として生きていくのか?」という新たな課題も生まれる気がします。