藤巻亮太「北極星」PR

藤巻亮太

藤巻亮太

変わるべきは他人じゃなくて自分
自然体で生まれた「北極星」

藤巻亮太にとって3枚目となるアルバム「北極星」がリリースされた。

今作には故郷・山梨での制作活動の中で生まれた表題曲や、小林武史とひさしぶりにタッグを組んだ「another story」、タブゾンビ(SOIL & "PIMP" SESSIONS)と共にホーンアレンジを手がけた「Blue Jet」などを収録。藤巻の自然で伸びやかな歌声が全編に響く、これまでになく開放感のある作品となっている。

どのような過程を経て、藤巻は本作を作り上げたのか。現在の彼のモードに迫るべく話を聞いた。

取材・文 / 小野島大
撮影 / 吉場正和

藤巻亮太「北極星」
2017年9月20日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
藤巻亮太「北極星」初回限定盤

初回限定盤 [CD]
3564円 / VICL-64845

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藤巻亮太「北極星」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64846

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収録曲
  1. 優しい星
  2. Blue Jet
  3. Have a nice day
  4. another story
  5. マスターキー
  6. 波音
  7. go my way
  8. 紙飛行機
  9. 北極星
  10. 愛を
  11. Life is Wonderful
  12. LIFE(※初回限定盤ボーナストラック)
  13. 3月9日(※初回限定盤ボーナストラック)

妄想でしかないものを追い求めて自分を追い込んでいた

──新作聴かせていただきました。すごく自然体で作られている感じで、伸びやかな開放感のある、いいアルバムに仕上がりましたね。

おっしゃる通りだと思います。1枚目のアルバム(2012年リリースの「オオカミ青年」)のことから話しますと、レミオロメンでは外に向かって開いていく世界を表現してきたんですね。ただ、10年やっていくうちに、だんだん自分のパーソナルな世界……ネガティブでダークな感情を吐露したいという気持ちが溜まってきたんです。「さすがにこれはレミオで表現する曲じゃないな」という思いがあって。それなら藤巻亮太ソロとして表現したいと思った。なので1枚目はレミオロメンでの10年のカウンター的に始まったものなんです。アルバムを1枚作って、ツアーをやることで、そうした気持ちは成就した。ただ、そこから自分のソロとしての迷いが深くなって。要はレミオでやってきたことの反動でしかなかったから、その先に何かやりたいことがあったわけではなかったんです。

藤巻亮太

藤巻亮太

──ソロでレミオではできないことを吐き出してみたけど、いざ吐き出してみたら、今後自分は何を表現していくべきかわからなくなった?

わからなくなりました。その時点でソロで何を出していけばいいのか、自分の中になかった。実はソロを1枚出したらまたレミオロメンをやろうという気持ちもあったんです。でもバンドって生きものだから、(前田)啓介がいて、(神宮司)治がいて、2人の意思もある。僕はレミオロメンはいつになるかはわからないけどちゃんと大事にやりたいと思ってたから、ソロを続けていこうと決めて。だけど、さっきも言った通り、表現したいものがもうないんです。すっからかんだから(笑)。貯金を全部使っちゃった状態だから、そこから「“ソロ”ってものを作っていかなくちゃいけない!」と思い始めて。初期衝動がそういうエッジの効いたもので、そういうものの延長線上で探そうとしても、そういう衝動はもうない。ソロってなんだろうって手探りで探し始めたんですけど、レミオではないソロをやるんだ、という思い込みがあって、どんどん狭いほうにいってしまう。作る曲作る曲、どれもスッカスカで。自分自身、これはいい方向に進んでないなって思った。

──なるほど。

つまり自分の中で線を引いてたんですよ。ここからここまでがレミオロメンで、ここからここはソロだ、というふうに。

──レミオではないソロならではのものをやろうと思ったら……。

煮詰まってしまった。もともとそんなものはなかったわけだから。で、あるとき弾き語りツアーを始めて(2013年9~11月に開催した「明日の歌旅 2013」)、そこでレミオの曲をやり始めて気付いたんです。自分がやってきたことに勝手に線を引いて分けてたのは自分自身だし、“レミオではない自分のソロ”っていう、ありもしない妄想でしかないものを追い求めて自分を追い込んでいたのも自分だと。この線を消していこうと思ったのが2ndアルバム(2016年リリースの「日日是好日」)なんです。1枚目はレミオからのカウンターで出てきたもので、2枚目は言わば開き直りのエネルギーですよね。自分の中の固定観念を消すような、解放に向かっていくエネルギーで作っていきましたね。

自分が歌うことで歌い継いでいくことを選んだ

──弾き語りツアーでレミオロメンの曲をやるとき、葛藤はありませんでしたか?

ありました。もしレミオロメンをやるなら、ソロでやるのはもったいないですよね。レミオの曲はレミオでやるのが一番いいに決まってるんだから、やらないほうがいいと思ってました。でもレミオがいつできるか全然見えない状況だったし、自分がソロでやっていくにしても、手がかりがまったくなさすぎて。なので改めてレミオロメンに向き合ってみようと思ったんです。その段階でレミオの曲を歌えるのは僕しかいないし。僕自身も歌いたかったし。

──あ、歌いたかったんですね。

ええ。いざ歌ってみたら、やっぱりいいなあと思ったんです。自分たちが作ってきたものだし、愛着も当然ある。楽曲は何も悪くない。今ここで歌わないと、この曲は誰も聴けなくなってしまう。3人としての表現はでないけど、自分が歌うことで歌い継いでいくことを選んだんです。

──で、歌ってみたら……。

「これも僕だな」と思いましたね。当然なんだけど。3分の1かもしれないけど、自分が作ってきたものだし。その都度自分なりにいろんな葛藤やストーリーがあって作ってきたものだから。

藤巻亮太

藤巻亮太

──それで吹っ切れた感があった。

そうです。すべてが地続きなんだから、1回自分の中の引き出しを全部開けてみようという気持ちになりました。

──そこで引き出しを開けてみたら、どんどん曲ができるようになった?

不思議なものでね。そこに気付く前は、マニアックで狭い世界の曲が多かったんです。自然じゃなかった。でもその引き出しの存在に気付いたら、曲があふれてきましたね。それが2ndにつながったんだと思います。人間のいろんな苦しみや悩みって、案外自分が作ってるんじゃないかと思いましたね。

──考え方1つでいろんなものが変わる。

そうですね。考え方1つで大きく違いました。すごく気持ちがラクになったし、音楽も生き生きし始めた。「オオカミ青年」とか「月食」みたいなザラッとしてダークで血の匂いのするような曲ばかりじゃなくて、「ビールとプリン」や「3月9日」みたいな曲も歌ってきたわけだし(笑)。

──その勢いで「日日是好日」を作って、それ以降は順調に来れている。

「オオカミ青年」から「日日是好日」まで3年半かかりましたが、今回は短いですよね。それが物語ってると思います。「日日是好日」を作るまで悩みが深かったんです。なんかね、自分で説明できなきゃいけないと思ってたんです。例えば、レミオロメンをやっていて、そこに入らない曲があったからソロになりました。でもそこで狭い世界に行ってしまって。レミオの曲をやってみたら開き直れて、こういうことができたんです、というような“理由”。いちいち自分のやってきたことを理屈で説明しようとしてた。だけど今回の「北極星」は、今、自分が生きてることを曲で表現しているんです。最初におっしゃっていただいたように、レミオとかソロとか関係なく、すごくナチュラルに自分の中から出てくるものが曲になってる。

藤巻亮太

藤巻亮太

──「こういうアルバムにしよう」とかそういうものなく、自然に曲が生まれてきた。

そうですね。今までも「ここに向かおう」と思って作ったアルバムってそんなにないんですけどね。いろんな曲の原型がどんどんできて、ここに入ってる曲以外にもいっぱいデモを作ったんです。その中で、この曲とこの曲は同じ匂いがする、同じアルバムに入りそうだな、というのをまとめながら、だんだん形にしていきました。