音楽ナタリー Power Push - デーモン閣下

デーモン閣下

熱狂的“信者”を迎えて放つ5年ぶりのソロ作

デーモン閣下が約5年ぶりとなるソロアルバム「EXISTENCE」を3月15日にリリースする。魔暦17年(2015年)から18年(2016年)にかけて行った聖飢魔IIの“期間限定再集結”ツアーで、ボーカリスト、パフォーマーとしての存在感を改めて示した閣下。ツアー終了後から制作に入ったという「EXISTENCE」には、閣下の盟友とも言えるスウェーデンのプロデューサー、アンダース・リドホルムのほか、聖飢魔IIの熱心な“信者”として知られる芥川賞作家の羽田圭介、コラムニストのブルボン小林、マンガ「テラフォーマーズ」の原作者・貴家悠が作詞家として参加している。音楽ナタリーでは、ハードロックやヘヴィメタルの枠にとどまらないサウンド、ストーリー性を重視したという歌詞など、閣下の個性的なアーティスト性がバランスよく示されている今作についてじっくりと話を聞いた。

取材・文 / 森朋之
撮影 / 後藤倫人

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デーモン閣下「EXISTENCE」
魔暦19年(2017年)3月15日リリース / アリオラジャパン
「EXISTENCE」初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / BVCL-785~6
「EXISTENCE」通常盤
通常盤 [CD]
3240円 / BVCL-787
収録内容
CD収録曲
  1. 深山幻想記 序曲
  2. ゴールはみえた
  3. Forest Of Rocks
  4. Just Being -ここにいる そこにいる-
  5. Shibuya Scrambled Crossing
  6. 地球へ道づれ!
  7. てふのやうにまひ
  8. 方舟の名はNoir
  9. 深山幻想記 -能Rock-
  10. Post Truth -青空が殺気立つ-
  11. Stolen Face
  12. Heavy Metal Strikes Back -血まみれの救世主(メサイア)たち-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ゴールはみえた」Music Video
  • H.E. Demon Kakka's Commentary

聖飢魔IIとは違うものをやりたい

──5年ぶりのソロアルバム「EXISTENCE」が完成しました。魔暦17年(2015年)から18年(2016年)にかけて聖飢魔IIの地球デビュー30周年を記念した“期間限定再集結”ツアーが行われ、昨年には17年ぶりとなる小教典(シングル)もリリースされて。さらに今回のソロアルバムと精力的な活動が続いていますが、これはもともと予定していたことなんでしょうか?

いや、そうではない。聖飢魔IIの再集結を計画した段階では、まだソロアルバムの話はなかったな。再集結のツアーが終わって1カ月後くらいの時期に「ソロアルバムを作りませんか」という話が出てきて、そのときに制作することが決まったんだ。

デーモン閣下

デーモン閣下

──制作に着手したとき、アルバムの全体的なビジョンはあったんですか?

明確なものがあったわけではないが、ソロアルバムであるのだから、聖飢魔IIとは違うものをやりたいという気持ちはあった。ハードロック、ヘヴィメタル系の曲を求められているのもわかっているから、ある程度はやるにせよ、バンドとの違いを出さないとソロをやる意味がないので。

──ヘヴィメタルというジャンルも細分化されてますからね。

まあ、そんな細かいことは一般の人にはわからないと思うが(笑)。聖飢魔IIの場合はすべての構成員(メンバー)のプレイが光る、しっかり聴こえるということも必要だし、全体のバランスを見ながら制作を進めていくわけだが、ソロアルバムでは必ずしもギターやドラムが目立つ必要はなくて。基本的に“歌がしっかり聴こえる”ということがメインになるわけだから、そこは大きく違うだろうね。例えば「ギターのフレーズが目立って、歌が聴こえづらい」という状況があった場合、聖飢魔IIでは両方が聴こえるように調整するのだが、ソロでは「いや、そこは歌の音量を上げて」という判断になる。わかりやすく言うと、そういうことだな。

新しいものが好きなのだ、吾輩は

──今回のアルバムにはヘヴィメタル、ハードロック以外にも1980年代ふうのポップロックやダンスミュージックのテイストを取り入れた楽曲もあって、仕上がりはかなりポップですよね。

うむ、全体を通してポップだと思う。これまでに何種類もソロアルバムを出してきたが、ほかのアーティストのヒット曲を歌ったアルバムは別にして、オリジナルの作品としては一番ポップなのではないかな。特に「今回はポップで聴きやすいアルバムにしよう」と意識していたわけでなく、「この曲をやってみたい」と選曲していくうちに自然とそうなったわけだが。

──作曲はデーモン閣下とスウェーデンの音楽プロデューサーであるアンダース・リドホルムさんが担当していますが、アンダースさんは閣下の盟友とも言える存在ですよね。

今回もほぼすべてのアレンジ、サウンドプロデュースを任せているからな。アルバムの収録曲はまず、彼のストック曲の中からセレクトしたのだ。そこで選んだ曲がポップなものだったということだろうね。

デーモン閣下

デーモン閣下

──アンダースさんとは音楽的にもシンクロする部分が多いんですか?

完全に合っているというわけではないが、仕事はやりやすいね。アメリカ人のプロデューサーに比べると日本人っぽい繊細さがあるんだ、彼には。例えば「歌の音量を上げてほしい」と言ったとき、アメリカ人のプロデューサーは「これでもか!」とドカンと上げる場合が多い。それに比べてアンダースは「ん? 本当に上げてくれた?」と思うくらい丁寧なので。彼はもともとTotoとかJourney、Asiaといった「ハードポップ、ちょっとプログレも入ってます」みたいな傾向の音楽が好きな人で、彼のオリジナル曲もそういうテイストのものが多い。我々はそれを聴きながら「今の時代にこのテイストを表現するには、どうしたらいいか?」と考えるわけだ。往年のテイストをそのまま出したほうがいいのか、それとも新しいカラーを加えたほうがいいのか。そのさじ加減は非常に難しいのだが。

──現在100050歳代の閣下も、80年代の音楽は通ってるわけですからね。

もちろん。当時の音楽を知ってるからこそ難しいんだ。シンセやドラムの音色1つで、時代感というものが決まってしまうからな。顧客の対象をどこに置くかによっても変わってくるのだ。往年を知っている人が「この感じ、懐かしいな」と思うような曲にするか、そんな人は置いておいて新しい音にするかっていう。まあ、そんなことを考えてもキリがないから、最終的には吾輩が「これがいい」と思うことをやっているけどな。ワハハハハハ!(笑)

──なるほど(笑)。特にソロアルバムの場合、閣下ご自身の好みが強く反映されているんでしょうね。

そうだな。基本的には新しいものが好きなのだ、吾輩は。わざわざ懐かしい音楽に戻る必要もないと基本的には思っている。