イマジカBS「総力特集 官能名画」放送記念特集

恋愛も性愛も映画で学べ!官能シネマ30選

イマジカBS「総力特集 官能名画」5月6日(土)~26日(金)特集サイトはこちら

ありきたりじゃMANZOKUできないエロス

文 / よしひろまさみち

官能的な映画にもいろいろとジャンルがあるが、純情系や初体験系では物足りないという人も多いだろう。そんな人にはフェティッシュな3作を。

「ブルーベルベット」より。
「ブルーベルベット」
1986年 アメリカ
監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ
デヴィッド・リンチが、不法侵入やのぞき見、性的虐待などの倒錯的行為を軸に人々の内面に潜む闇を描いたサスペンス。大学生のジェフリーが、野原で人間の片耳を発見したことから事件に巻き込まれていく。ジェフリーは手がかりを求めて忍び込んだアパートの一室で、歌手ドロシーの変態的な性行為を目の当たりにする。

まずはフェティッシュというよりも、異様さ満点なデヴィッド・リンチ監督作「ブルーベルベット」。1987年に日本公開された当時、デヴィッド・リンチは“「エレファント・マン」の監督”として知られていただけに、いったいどんな作品だかよくわからずに観に行った者が多かった。それが公開されるや否や、狂気むき出しのデニス・ホッパーがイザベラ・ロッセリーニをひんむいて、ほぼ性的虐待に近いSMプレイをするという、衝撃的なシーンの連続に観る者が度肝を抜かれた。今と比べると性的な描写にまだまだおぼこい1980年代の映画ファンは唖然。この作品のあと、今年から新シリーズがスタートするほど大ヒットを記録したドラマ「ツイン・ピークス」を手がけた彼が、まさにその原型で今で言う“デヴィッド・リンチらしさ”でもある、珍妙な物語と終わりなき狂気の世界を創り出したメジャー初の作品とも言える。

「ナインハーフ」より。
「ナインハーフ」
1985年 アメリカ
監督:エイドリアン・ライン
出演:ミッキー・ローク、キム・ベイシンガー
突然現れたハンサムな男と、彼の言いなりになる女の9週間半にわたるゆがんだ関係を描く。男との行為を重ねるうちに性に目覚めていく女だったが、彼のサディスティックな要求がエスカレートし、ある決意をする。目隠しして体に氷を這わせるなど過激な性描写が多い一方、不器用な男女の生き方が切ない余韻を残す一編。

そして、同じく1980年代後期のハリウッド映画ブーム時、倒錯愛を描いてヒットしたのが「ナインハーフ」。「フラッシュダンス」を大ヒットさせたエイドリアン・ライン監督、当時セクシー男優として売れっ子だったミッキー・ローク主演ということで、女性ファンも詰めかけた。お堅い女性がたまたま出会った男のツンデレな恋愛アプローチに翻弄されるというストーリーに、時代と寝た色男ミッキー・ロークという組み合わせは、確かに女性にも響く。だが、レズビアンプレイ、SMチックなプレイの強要やバイオレンスがたっぷりで、当時の女子は「ひえ~!」。おかげで女子のみならず、男性も大喝采の一大センセーションとなったことは言うまでもない。

「O嬢の物語」(R-15指定版)より。
「O嬢の物語」(R-15指定版)
1975年 フランス、西ドイツ
監督:ジュスト・ジャカン
出演:コリンヌ・クレリー、ウド・キア
ポーリーヌ・レアージュによる同名の官能小説を「エマニエル夫人」のジュスト・ジャカンが映像化。恋人と一緒にある館を訪れた“O嬢”が、手錠と首輪をはめられ犯されていくうちに、一種の快楽に目覚めていくさまを描き出す。男女のセックスやレズシーンはもちろん、裸のO嬢が着衣の男と絡むCMNFシーンも収められている。放送はR-15指定版。

最後にクラシックな一作「O嬢の物語」。1974年に「エマニエル夫人」が大ヒットし、にわかにソフトポルノが流行した時代。同作でデビューしたジュスト・ジャカン監督が手がけ、1976年に日本公開されたのが本作だ。原作からしてSM文学なのだが、映画版もいきなりむち打ち・乱交・苦痛を伴うSM。ありとあらゆる官能シーンが展開するが、今観直すと「あれ、見覚えが……?」というカットが多いことに気付く。そう、1980年代以降に製作されたあらゆる官能映画は、この作品からインスパイアされているのだ。それらオマージュを捧げている作品を想像しながら楽しむのも一興だろう。

こちらもオススメ!

「愛の施術 至極の教典TAO(タオ)」より。
「愛の施術 至極の教典TAO(タオ)」
2008年 アルゼンチン、フランス
監督:エリセオ・スビエラ
出演:リアンドロ・スティーヴルマン、アントネッラ・コスタ
インドの性典「カーマ・スートラ」を超える中国の教典「TAO」により、未知なる性の世界に導かれていく青年エロイを描いた物語。父親の死をきっかけに夢遊病になったエロイが、歳上の女性エルビラから性の手ほどきを受けることにより、次第に癒やされていくさまを追う。劇中では、アントネッラ・コスタが美しい肢体を惜しみなく披露している。
「交歓生活」より。
「交歓生活」
1971年 フランス
監督:ジャン=フランソワ・ダヴィ
出演:フィリップ・ガステ、カリーヌ・ジャンテ
フレンチエロスの先駆けとなったドラマ。ミステリアスな美女シルヴィの誘いを受けたピエールは、既婚者でありながら彼女の別荘を訪れる。しかしシルヴィには夫がおり、夫婦がフリーセックスを謳歌する快楽主義者であることが明らかに……。男女が肉欲に溺れていく様子を、ベッドシーンたっぷりに描き出す。
「ブルー・イグアナの夜」より。
「ブルー・イグアナの夜」
2000年 アメリカ
監督:マイケル・ラドフォード
出演:ダリル・ハンナ、シーラ・ケリー
「イル・ポスティーノ」で知られるマイケル・ラドフォードが、ストリップクラブのブルー・イグアナで働くショーガールたちの人生を切り取った群像劇。ブルー・イグアナでは、毎夜5人のダンサーが官能的なパフォーマンスを披露している。きらびやかな表舞台で活躍する一方、彼女たちはさまざまな悩みや問題を抱えているのだった……。

フランスの名匠が撮るエロス

文 / 折田千鶴子

「髪結いの亭主」より。
「髪結いの亭主」
1990年 フランス
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ
「理容師の夫になりたい」と子供の頃から思い続け、その夢を叶えた男の甘美な生活を描く。整髪料の匂いや柔らかな指の感触が画面から伝わるような艶かしい映像、女性の肉体美を再確認させるアンナ・ガリエナの所作が魅力。「イヴォンヌの香り」などで知られる監督パトリス・ルコントの名を一躍世に轟かせた作品だ。

今宵は、愛のムードを味わいたい。そんな方にまずオススメしたいのは、「髪結いの亭主」。滴るような官能がとろ~りあふれ、愛の世界へ誘われる。子供の頃から“髪結い(美容師)の女性”と結婚することを夢見るアントワーヌが、美しい理想のマチルドと出会い、幸せな生活を送るが──。甘い香り漂うようなマチルドの妖艶さ、アントワーヌの“至福”が映し込まれた映像美にうっとりしていると、衝撃の結末が訪れる。それはもう、胸がねじれるほど痛い切なさ! 監督パトリス・ルコントは、「タンゴ」「タンデム」といった男たちの愉快なコメディから、「仕立て屋の恋」「イヴォンヌの香り」など愛の映画に至るまで、洒脱な語りで観客を魅了し、かつて日本でのフランス映画ブームを牽引した名匠である。中でもこの「髪結いの亭主」は27年経った今も彼の代表作であり、官能と愛の名作とされる。人を愛し愛されることの甘美な苦悩を、どっぷり味わってほしい。

「美しき諍い女」(最高画質版)より。
「美しき諍い女」(最高画質版)
1991年 フランス
監督:ジャック・リヴェット
出演:ミシェル・ピコリ、エマニュエル・ベアール、ジェーン・バーキン
2016年に死去したジャック・リヴェットが、カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した作品。「美しき諍い女」と題された絵に挑む老画家や若く美しいモデルの心の機微を、長回しを多用しながら丁寧に捉えていく。約4時間に及ぶ上映時間の間、ほぼ全編にわたりエマニュエル・ベアールが美しい肢体をさらした。テレビ初となるHD高画質版で放送。

ヌーヴェルヴァーグの旗手として1960~1970年代に革新をもたらしたジャック・リヴェットが、1991年に撮った「美しき諍い女」は、リヴェットの代表作にして燦然と輝く意欲的な傑作である。ほぼ全編に全裸で登場するエマニュエル・ベアールの美しく弾力ある裸体やヘア問題でも大きな話題を呼んだが、なまじ安いエロスは皆無。巨匠の手により、まさに哲学的な芸術作品に昇華した。筆を折った状態の画家が、美しいモデルを得ることで、再びカンバスに向き合う。全裸のモデルにアクロバティックな体勢を強い、そこから何かを引き出そうと老画家はひたすら描く、描く、描く。ただの線がいつしか人間の肉体デッサンになっていく創作過程をつぶさに目撃できるのも魅力だ。暴君のような画家に挑戦的な眼差しで抵抗しながら、いつしか彼の狂気に近い表現への欲望に同化していくモデルが、画家と支配的立場を逆にしていく過程には倒錯したエロティシズムが漂い、緊迫感とスリルに満ちる。まさに死闘とも呼ぶべき画家とモデル、巻き込まれる周囲の葛藤が刻印された本作。哲学とエロスの融合を味わいたい人、必見の1作である。

「華麗な関係」より。
「華麗な関係」
1976年 フランス
監督:ロジェ・ヴァディム
出演:シルヴィア・クリステル、ジョン・フィンチ
原作はコデルロス・ド・ラクロの恋愛小説。19世紀初頭、フランス社交界でドン・ファンの異名を取る伯爵と美しき人妻が情事を繰り返す中、かつて伯爵の愛人だった女が2人の中を裂こうと罠を仕掛ける。監督のロジェ・ヴァディム本人も派手な恋愛遍歴で知られ、ブリジット・バルドーやジェーン・フォンダを妻としていたことも。

さて、最後はライトに楽しめる1本を。プレイボーイの巨匠ロジェ・ヴァディムによる「華麗な関係」は、1959年の「危険な関係」を自身でリメイクした作品だ。コデルロス・ド・ラクロの原作は、グレン・クローズ主演の「危険な関係」や、ペ・ヨンジュン主演の「スキャンダル」のほか、何度も映画化されているので、比較して楽しむのも乙だろう。ちなみに本作の見どころは、「エマニエル夫人」のシルヴィア・クリステルと、「個人教授」のナタリー・ドロン、2大フレンチ官能女優(出身はそれぞれオランダ/モロッコだが)の美の競演に尽きる。とりわけクリステルの可憐な“官能のよろめき”は、男女問わず垂涎ものである。

こちらもオススメ!

「クリシーの静かな日々」より。
「クリシーの静かな日々」
1990年 フランス、イタリア、ドイツ
監督:クロード・シャブロル
出演:アンドリュー・マッカーシー、ナイジェル・ヘイバース
ヘンリー・ミラーの自伝的短編小説を、「いとこ同志」でベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたクロード・シャブロルが映像化。1930年代のパリを舞台に、新進小説家と前衛的な写真家、そして小悪魔的魅力を放つ少女が過ごした性と愛の日々を映し出す。享楽にふける若き芸術家たちの刹那的な青春を描いた作品。

「ブルーベルベット」© 1986 STUDIOCANAL IMAGE. All Rights Reserved 「ナインハーフ」©1986 JONESFILM「O嬢の物語」(R-15指定版)© 1975 BRINTER / ARTEDIS 「愛の施術 至極の教典TAO(タオ)」©2008, Buenos Aires, Pensa&Rocca Cine. All Rights Reserved 「交歓生活」© OPENING 「ブルー・イグアナの夜」©2000 Improduction Limited. All Rights Reserved. 「髪結いの亭主」©1990 LAMBART Productions - TF1 Films Production 「美しき諍い女」(最高画質版)© 1992 PIERRE GRISE PRODUCTIONS – FRANCE 3 FILMS PRODUCTION – A.D.A.C.P. - PARIS 「華麗な関係」©1977 O. B. FILMS 「クリシーの静かな日々」© 1990-2016 – LCJ Editions & Productions - All rights reserved.