映画ナタリー Power Push - 映画「ミュージアム」特集 大友啓史インタビュー

映画「ミュージアム」特集
大友啓史インタビュー

“殺人アーティスト” カエル男が象徴するものとは

小栗旬と妻夫木聡をキャストに迎え、巴亮介の同名マンガを実写映画化した「ミュージアム」。雨の日だけに発生する猟奇殺人事件を追う刑事・沢村と、自らを“アーティスト”と称しおぞましい犯行に手を染める“カエル男”の攻防を描いた本作のBlu-ray / DVDが、3月16日に発売された。

映画ナタリーでは、監督を務めた大友啓史にインタビューを実施。綿密なリサーチのもと現代日本の問題点を反映させ、複雑で繊細な人間ドラマとしても楽しめるスリラーエンタテインメントに仕上げた映画本編や、海外の映画祭での反応、ソフトならではの楽しみ方などについて語ってもらった。なおコミックナタリーでは「秘密結社 鷹の爪」で知られるFROGMANへのインタビューを掲載。こちらもあわせてチェックしてほしい。

取材・文 / 平野彰
撮影 / 入江達也

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Blu-ray / DVD「ミュージアム」
発売中 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
初回仕様 Blu-ray / DVDセット
初回仕様 Blu-ray / DVDセット
7549円
通常仕様 Blu-ray
通常仕様 Blu-ray
5389円
通常仕様 DVD
通常仕様 DVD
4309円
収録内容
初回仕様収録内容
  • DISC1(Blu-ray)
    本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分)
  • DISC2(DVD)
    本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分)
  • DISC3(DVD)
    3時間を超える豪華映像特典収録(約228分)
    1. メイキング・オブ・ミュージアム(約106分)
    2. インタビュー集:小栗旬、尾野真千子、野村周平、妻夫木聡、大友啓史(約46分)
    3. イベント映像集:ジャパンプレミア舞台挨拶&初日舞台挨拶&大ヒット御礼舞台挨拶(約29分)
    4. 小栗旬×大友啓史 シーンセレクション・インタビュー(約47分)
初回仕様
  • 3面デジパック仕様
  • アウターケース
  • フォトブック(64P)
通常仕様収録内容
  • DISC1(Blu-ray / DVD)
    本編(約132分)+特報やスポットなどの映像特典(約4分)
解説
ストーリー

ある雨の日、犠牲者を鎖で縛り獰猛なドーベルマンに生きながら食わせるという猟奇殺人事件が発生した。犬の体内から見つかったのは「ドッグフードの刑」と書かれたメモ。警視庁捜査一課の巡査部長・沢村は部下の西野とともに捜査を進めるが、今度は「母の痛みを知りましょうの刑」と名付けられた殺人が起こる。被害者は2人とも、4年前に発生した「幼女樹脂詰め殺人事件」で裁判員を務めていた。青ざめる沢村。仕事にかまけて家庭を顧みなかった彼に愛想を尽かし、息子とともに家を出ていった妻・遥もその裁判員の1人だったのだ。新たな犠牲者が出る中、必死で妻子の居所を探す沢村だったが、2人は謎の男に連れ去られてしまう。そして、焦る沢村と西野の前に突如姿を現したのは、カエルのマスクを被り自らを“アーティスト”と称する犯人だった。

キャスト
  • 沢村久志:小栗旬
  • 沢村遥:尾野真千子
  • 西野純一:野村周平
  • 菅原剛:丸山智己
  • 秋山佳代:田畑智子
  • 橘幹絵:市川実日子
  • 岡部利夫:伊武雅刀
  • 沢村の父:大森南朋
  • 関端浩三:松重豊
  • カエル男:妻夫木聡
スタッフ
  • 監督:大友啓史
  • 原作:巴亮介「ミュージアム」(講談社刊)
  • 脚本:高橋泉、藤井清美、大友啓史
  • 主題歌:ONE OK ROCK「Taking Off」
コミックナタリー 映画「ミュージアム」特集 FROGMANインタビュー

後味の悪さが武器

──今回は、劇場公開時にはお話しされなかったことなども伺えればと思います。まず、原作についてですが、エグゼクティブプロデューサーの小岩井宏悦さんから映画化のオファーを受け、そのときに初めて読まれたそうですね。

そうです。「るろうに剣心」3部作の次は何をやろうかと思っていたときに、このお話をいただきました。

──どんな感想を持たれましたか?

「グロいね」みたいな(笑)。それから、後味が悪い話だけど、そこがこのお話の武器だよねと。同時に「え、これ本当にやっちゃっていいの?」とも思いました。ファミリー層をターゲットにしたようなものには絶対にならないじゃないですか。原作は「セブン」や「オールド・ボーイ」「SAW ソウ」の影響を受けて描かれたような作品で、これをちゃんと映像化していくと、観客を選ぶ映画になる。なので、プロデューサーの考えていることと僕の考えていることをすり合わせて、どんな作品に落とし込んでいくのか探っていきました。

「ミュージアム」より。

「ミュージアム」より。

最後に浮かんだラストシーン

──脚本には、高橋泉さん、藤井清美さん、大友監督のお名前がクレジットされています。どのように脚色されていったのでしょうか。

僕としては、単なる残酷趣味で作ったり、「セブン」の焼き直しみたいなものにはしたくなかった。考えたのは、どんなふうにこの物語を現代の日本にふさわしいものにするのかということ。そして、犯人の背景を僕は描きたかったんです。「セブン」では“7つの大罪”が物語の柱になっていますが、「ミュージアム」にとってその柱はなんだろうと考えた。泉くんに何稿か書いてもらいつつ突き詰めていったところ、それは「ストレス」かなと。制作前に取材をしていて改めて感じたんですが、日本って豊かで平和ではあるけど、ストレスフルな社会ですよね。身近な例で言えば、満員電車とか。そのうち「キラーストレス」という新しい言葉も出てきて。

──キラーストレス……初めて聞きました。

文字通り、人の体を壊して死に追いやってしまうほどの強いストレスです。カエル男はその産物なのではないかと思いました。彼は自らをアーティストと称して猟奇殺人を犯す。しかも犠牲者の背景やプロフィールを調べて、それぞれにふさわしい私刑を下す。被害者のプライベートや考え方、どういう暮らしをしているのかを知るために、徹底的に調査を行ったうえでああいう刑を与えている。彼はすごい調査能力を持っているんですよ。そのうえカエルのマスクを作るような造形の才能もある。本来だったら世の中に出て、技術と才能を生かして生きていけたはずなんです。ハリウッドで特殊メイクアップアーティストをやっていてもおかしくない。ところがある事情からそれは叶わず、過去にトラウマを抱えている。そういったストレスがたまりにたまった結果狂気に駆られてしまったのかもしれない、という仮説を立てて脚本を作っていきました。そして一番最後にあのラストシーンが浮かんだ。

──脚色作業もかなり大詰めの段階で、原作とは異なるあのラストシーンが浮かんだんですね。

そう。なかなかアイデアが浮かばなくてうわーっとなってる中で藤井さんに加わってもらったんですが、ラストシーンを思い付いたときは、口述筆記みたいにがーっと僕がしゃべって彼女に書いてもらいました。そして補填するべきところをいくつかお願いして。彼女が書いたシーンと泉くんが書いたシーンというベースがあって、最終的に僕がまとめ上げたという感じですね。

大友啓史

大友啓史

──なるほど。制作前には、警察に綿密な取材をされたそうですが、そのときに知った意外な事実やエピソードはありますか?

殺人などの凶悪犯罪を扱う捜査一課の刑事さんの家を何軒か取材して思ったことは、父親の痕跡が少ないということですね。どうしてかというと、犯人や容疑者に報復を受ける可能性があるから。

──父親の痕跡が少ないというのは、具体的にはどのような状況なんでしょう。

あるご家庭は、ウイスキーが対面カウンターのところにぽんと置いてあるぐらいで、それ以外に父親の存在を匂わせるものがありませんでした。父親が読みそうな本1冊すらないんです。

──そうした取材をもとに、映画に生かしたことはありますか?

捜査一課の刑事というのは、被害者の魂を鎮めるために必ず犯人を捕まえるという強い決意のもと仕事をしています。だからプレミアムフライデーなんてものはない(笑)。24時間気を抜けない仕事だと彼らは言ってました。それはやっぱり沢村の人物像に反映されてると思います。

「ミュージアム」より。

「ミュージアム」より。

今の若い人たちは生きている実感が薄いのかもしれない

──「ミュージアム」は過激なテイストを持った作品ですが、映画ナタリーでは記事を出すたびに大きな反響がありました。現代の日本ではこうした作品が求められていると思いますか?

宣伝で地方に行ったときにね、ジャージを着た若い女の子の集団が8人ぐらいやって来たわけ。「あー大友さん、サインください!」とか言われて話していると、「るろ剣」じゃなくて「『ミュージアム』観たんです!」って言うんですよ(笑)。あまり分析は好きじゃないけど、“壁ドン”シーンがあるような恋愛映画も、実際には恋愛をしていない子たちが劇場に来ているんじゃないかな。つまり、本当に恋愛で忙しい人は観ないよ、そんな映画っていう(笑)。同じ論理でいくと、やっぱり今の若い人たちって、生きている実感みたいなものがちょっと薄いんじゃないかと思います。彼女たち彼らたちが主に関心を持っているのは虚構の世界で、実際に起きている事件は遠い出来事だと感じているのかもしれない。

──2016年の10月、本作はスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭にて上映され、大友監督も登壇されましたね(参照:「ミュージアム」シッチェス映画祭に大友啓史とカエル男登場、観客から大歓声)。海外の観客と日本の観客で、作品の受け取り方の違いなどはありましたか?

シッチェスでは「もっとやれ」という感じでしたね。「もっと血まみれでいい」「もっとスプラッターやれ」みたいな。そういうお客さんたちが来る映画祭ですから。だから、一般的な海外の人たちの反応とは違うんじゃないかな(笑)。「意外と真面目な映画だったな」ぐらいの感想でした。でも評判はすごくよかったんですよ。「傑作だった」と言ってくれる若い子たちもけっこういて。わざわざ僕のところに来て「すごく面白かった」と言ってくれたぐらいです。