映画「夜明け告げるルーのうた」PR

「夜明け告げるルーのうた」湯浅政明×高杉真宙

「夜明け告げるルーのうた」
湯浅政明×高杉真宙

みんなが会いたくなるキャラクターの誕生!人魚と人間によるボーイミーツガール

子供の頃観ていた「パンダコパンダ」などを意識した(湯浅)

高杉 ルーの頭の中に小さな魚が泳いでいて、不思議な印象を受けました。あと音楽を聴くと尾びれが2本の足になるところも面白かったです。今までの人魚のキャラクターにはない設定だなって思いました。あとサメみたいなルーのパパがなぜかスーツ着てて(笑)。一番共感できたのはカイですが、ほかのキャラクターも魅力的でした。

湯浅 人魚の尾びれが足になるには何かきっかけが必要だと思っていたので今の設定になりました。頭の中に魚が泳いでいるのはキャラクター原案のねむようこ先生のアイデアです。あとワカメを着てるのもねむ先生からいただいた案です。

高杉 着てましたね(笑)。

湯浅 ルーのパパがスーツを着ているのは僕のアイデアです。「パンダコパンダ」とかを意識しました。自分が子供の頃に観ていたアニメーションがやっぱり好きなので。その点でも先ほど言った通り、長編アニメーション、つまり漫画映画の王道を意識しました。

──キャラクター原案をねむ先生にお願いした理由はなんだったんですか?

湯浅 僕の作品は画が見づらいとか言われてしまうので(笑)、繊細な雰囲気を取り入れたいと思ったんです。だから少女マンガ家の方にお願いできればと考えていて。その中でねむ先生は、少女マンガの繊細さを持ちながら、シンプルで力強い線を引かれていたので、いいキャラクターを作ってくれそうだなと。あと人魚のアイデアがたくさんあって、アイデアマンで助かりました。

高杉 人魚に噛まれた人や動物が人魚になってしまうという設定がドラキュラみたいだなと思いました。日光に弱いところとかも。それはどうやって決めていったんですか?

「夜明け告げるルーのうた」より。

「夜明け告げるルーのうた」より。

湯浅 初めはヴァンパイアの企画だったんです。それがモノノケになって、最終的に人魚に決まったんです。でもヴァンパイア的な設定があったほうが面白いと思い、今の形に着地しました。

高杉 人魚に噛まれた魚の不気味な姿を見て、人魚を忌み嫌う町の人たちの気持ちも理解できるなって思いました(笑)。

湯浅 正解です(笑)。人魚に変えたのは、そっちのほうが愛されるキャラクターになると考えたからなんです。そして異質な存在を描くのは、自分が理解されたいからなのかな。人を理解するのはすごく難しい。でも他人を受け入れられる器が欲しいという思いもそこにあるんだと思います。

湯浅監督の独特な表現に魅力を感じる(高杉)

高杉 皆さんも同じだと思うんですけど、僕は湯浅監督の独特な表現に魅力を感じていて。この作品でもアクションがすごかったです。確かに水なのに僕が知っている水とは違うものに見える動きとか。あと火の表現にも魅了されました。

湯浅 ありがとうございます。自然現象などディテールが多いものはそれを表現するためにスタイルがいるんです。この作品では漫画映画の王道的なスタイルを選んで、それを今風にアレンジしつつ描いています。高杉さんがおっしゃってくれたように特殊な形になりながらも水っぽさがある動きを作れればと思っていました。

「夜明け告げるルーのうた」より。

「夜明け告げるルーのうた」より。

高杉 本当に不思議な動きでした。水を描くのはすごく難しそうですよね。それでも描きたい理由はなんですか?

湯浅 この業界に入って最初期にやったテレビアニメ「キテレツ大百科」の原画で似たような固形の水を動かしたんです。それがすごく楽しくて、また水を描きたいと思っていたんです。でも描いてると愛着が湧いてきて、水もキャラクターだなと思いますね。僕はそんなに泳げないんですけど(笑)。

──本日は湯浅監督が代表を務めるサイエンスSARUで取材を行っています。高杉さんはスタジオに来るのは初めてですか?

高杉 はい。昨日は緊張で眠れませんでした(笑)。先ほどスタッフの方にフラッシュアニメーションの制作過程を見せていただきました。繰り返しの動きが得意ということはわかったんですが、パーツごとに大きさを調整できたりして、逆に動きを決めるのが難しそうだなって。でもそういう微細な調整によって作品がよりリアルになっているんだと思いました。あとスタジオにお邪魔する前に調べて知ったフラッシュアニメーションと全然違いました。

左から湯浅政明、高杉真宙。

左から湯浅政明、高杉真宙。

湯浅 フラッシュアニメーションについて調べると、紙芝居みたいなものしか出てこないですよね。この技術を選んだのはいくつか利点があるからで、音楽を聴きながら動きを描いたり、カタチ崩れのしない部品を滑らかに動かせたり。

高杉 制作中のPCの画面は、タイムライン上にいろんな素材が並んでて音楽を作っているみたいでした。冒頭のカイがPCを使って音楽を作るシーンを思い出しました。

湯浅 確かに、小さな部品がたくさん集まってる感じですね。そういうふうに部品を集めて1つの画を作っているので、完成のイメージが固まってないとうまくまとまらないんです。

セリフがなくても伝わる表現が理想(湯浅)

高杉 湯浅監督のほかの作品でもそうなんですけど、「ルー」でも画面の雰囲気がガラッと変わったり、突然カラフルな世界が展開されたりしてびっくりしました。ほかの方が作られたアニメーションでは観たことない映像で。そういうイメージはどうやって出てくるんですか?

湯浅 プロットや脚本が上がって、どういうふうに描けばそれを表せるんだろうって考え、画を作っていきます。

高杉 そうなんですか!? 初めにイメージがあるんだと思っていました。

湯浅 それも大事だと思うんですけど、作品全体のイメージがあって、そこからその中心になるような画が生まれることが多いですね。宮崎駿さんや黒澤明さんとかのイメージボードはまさに作品の中心になるイメージだと思うんですけど。

高杉 なるほど。

湯浅 アニメーションって表現の方法が無数にあるんです。例えば人が歩くというシーンを作るとなったとき、それを自然に見せるのがすごく難しいんですよ。描くべきことがいっぱいあるので、どこに力を使うかを考えなくてはいけない。向かうべき方向をはっきりと決めて、キャラクターも、動きも、デザインもそれを表現するのに一番適したものを組み立てたいと考えています。あとは現実ではできないようなこともアニメーションではできるので、そのような要素を入れていけたらと思っています。

「夜明け告げるルーのうた」より。

「夜明け告げるルーのうた」より。

高杉 セリフではなく画で見せることを意識されているんですね。

湯浅 はい。セリフがなくても伝わるのが一番いいと思っています。それがアニメーションのよさでもあるので。

「夜明け告げるルーのうた」
2017年5月19日(金)全国ロードショー
「夜明け告げるルーのうた」
ストーリー

中学生の少年カイは、寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)で父親と祖父との3人暮らし。両親の離婚によって東京から父と母の故郷に引っ越してきたカイは、鬱屈した気持ちを抱え自分の殻に閉じこもっていた。そんなある日、カイはクラスメイトの遊歩と国夫に彼らが組んでいるバンド・セイレーンのメンバーに誘われる。しぶしぶ練習場所の人魚島に行ったカイは、不思議な歌声を聞き、その声に惹かれる。その夜、自宅に帰ったカイは水を操る人魚の少女ルーと出会う。楽しそうに歌い、無邪気に踊り、自分の思いを正直に話すルーと一緒に過ごすことで、少しずつ自分の気持ちを口に出せるようになっていくカイ。しかし、あるきっかけからルーと町の人たちとの間に大きな溝が生まれてしまい……。

スタッフ

脚本・監督:湯浅政明
キャラクター原案:ねむようこ
キャラクターデザイン・作画監督:伊東伸高
共同脚本:吉田玲子
音楽:村松崇継
主題歌:斉藤和義「歌うたいのバラッド」(SPEEDSTAR RECORDS)

キャスト

ルー:谷花音
カイ:下田翔大
ルーのパパ:篠原信一
遊歩:寿美菜子
国夫:斉藤壮馬
カイの祖父:柄本明

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