弐瓶勉×「ゴースト・イン・ザ・シェル」

弐瓶勉 × 「ゴースト・イン・ザ・シェル」

R・サンダース監督と同じく、押井守版「攻殻機動隊」直撃世代!

弐瓶勉が語る“マンガを映像化すること”

士郎正宗の原作をもとに、数々の劇場アニメ、テレビアニメ、ゲームなどのメディアミックスが展開され、作品ごとに主人公・草薙素子への異なるアプローチがなされてきた「攻殻機動隊」。満を持して4月7日、ルパート・サンダース監督によるハリウッド映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」が日本公開される。

このたび、ナタリーではコミック、音楽、映画、お笑いの各ジャンルが連動して「ゴースト・イン・ザ・シェル」を盛り上げるインタビュー特集を実施。初回を飾るコミックナタリーでは、「シドニアの騎士」などで知られる弐瓶勉に、影響を受けたという「攻殻機動隊」、そして「シドニアの騎士」や劇場公開を控える「BLAME!」、最新作「人形の国」について語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦

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映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」
2017年4月7日全国公開
映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」
解説
ストーリー

電脳技術が発達し、人々が義体(サイボーグ)化を選ぶようになった近未来。脳以外は全身義体の“少佐”が率いるエリート捜査部隊は、ハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバーテクノロジーを狙うテロ組織と対峙する。上司の荒巻大輔や片腕的存在のバトーと協力し、捜査を進めていく少佐。やがて事件は少佐の脳にわずかに残された過去の記憶へとつながり、彼女の存在を揺るがす事態に発展していく。

スタッフ / キャスト

監督:ルパート・サンダース

原作:士郎正宗「攻殻機動隊」

出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、ピルウ・アスベック、桃井かおりほか

「攻殻機動隊」ほど描き込んでいるマンガはない

──「攻殻機動隊」といえば、弐瓶さんは2015年6月に開催されたテレビアニメ「シドニアの騎士 第九惑星戦役」と「攻殻機動隊 新劇場版」の上映イベント「SFコラボナイト」に登壇されましたね(参照:シドニアの騎士×攻殻機動隊W上映会、弐瓶勉「創作で目指すのは遠未来」)。

映画の公開とアニメの放送が同じ時期だったので、両作品ともお好きなファンの方もいるんじゃないかなということで企画されたものですね。「攻殻機動隊 新劇場版」の脚本を手がけた冲方丁さんのファンの女性がたくさん会場にいらっしゃっていたことを覚えてます。

──弐瓶さんはこれまで影響を受けた作品として「風の谷のナウシカ」や「AKIRA」のタイトルを挙げられていましたが、「攻殻機動隊」もそのひとつだとか。

そうですね、かなり好きです。「AKIRA」がヤングマガジンで連載していた頃、ヤングマガジン海賊版という増刊で「攻殻機動隊」が始まったんです。そのときから読んでいるので(※「攻殻機動隊」はヤングマガジン海賊版1989年5月号~1991年11月号、ヤングマガジン1992年26号~1997年38号に連載された)。ただ、海賊版は季刊だったので、うっかり買い忘れたことが何回かあって悔しい思いをした記憶があります。2年ぐらいかかって単行本が出て、ようやく全話読むことができて。

士郎正宗「攻殻機動隊」

士郎正宗「攻殻機動隊」

──当時読んだ感想はいかがでしたか?

こんなにコマ数多くて描き込んでいるマンガってあまりないじゃないですか。背景ひとつにしても印刷したら細かすぎてつぶれちゃうんじゃないかってくらい描き込まれていて、びっくりしました。絵も上手いし、そして女の子がかわいい(笑)。SFに興味がない人に読んでもらううえでも大事なことですよね。あと、驚いたのはそこに描かれていた世界観です。

──インターネットが一般的に普及する何年も前に、現実世界とサイバー空間が交錯する世界を描いていました。

ちょうどウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」を筆頭にサイバーパンクが流行っていた時期だったので、ど真ん中でしたね。「人形使い」(他人の電脳をハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー)とか、バトーの目の埋め込みレンズの造型とか。そういうSF小説からの取り入れ方も面白かったですね。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」よりバトー。©MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

「ゴースト・イン・ザ・シェル」よりバトー。©MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

──物語に登場する専門用語について、欄外まで小さい文字で解説が入っていたり、ページあたりの情報量の多さは群を抜いていたと思います。

あの解説も連載時は写植じゃなく手書きだったような気がします。士郎さんとはまだお会いしたことがないんですけれども、僕も何かしらの影響は受けていると思います。

だから僕は遠い未来を描きたい

──「攻殻機動隊」の人形使い事件が発生したのが2029年。ちなみに「ブレードランナー」の舞台が2019年です。

あと2年後ですか。そう考えると、大抵の近未来ものは現実に追い越されちゃいますね。だから僕は遠い未来を描きたいんです。出てくるガジェットもある程度は現代にあるものを残してますけど、同じデザインはほとんどないようにしています。「ここが違う!」とか言われたくないし。

「シドニアの騎士」イラスト。

「シドニアの騎士」イラスト。

──それを言うと、「攻殻機動隊」には銃器類やバイクにも注釈が入っていましたね。「この時代に果たして二輪駆動が使われていたかどうかはさだかではないが」みたいな。

読む側からしたら全然気にならないところですけど(笑)、描く人はすごく考えちゃうんですよ。やっぱりそういう人じゃないと、あの絵は描けないですよね。僕は資料をそのまま描くのが嫌で背景も全部自分で描いてますが、せっかくだったらもとがないものを描きたいじゃないですか。それを現実社会と1個1個つじつまを合わせようとしたら頭がおかしくなりそうになるから、今とはテクノロジーが全然違う遠未来ということにしておけば、何をやってもよくなるんです。

──遠い未来を描くということは、マンガ家を目指していたときから意識されていたんですか?

ええ。SF小説の好きなジャンルが遠未来ものだったんです。それで最初に描いた「BLAME!」も遠い未来の話になって。

──「SFコラボナイト」でも弐瓶さんは「創作で目指しているのは、現実では絶対ありえないような状況や世界観を描いて、そこに人間を置くこと。『攻殻』は近未来ですが、『シドニア』は遠未来。1000年後なんです」とおっしゃってました。

あれは「攻殻機動隊」が近未来だから、そう言っただけです。この先、近未来ものも描くかもしれません。今のところは全部遠未来ですね。新連載の「人形の国」も遠未来ものなので。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」より。 ©MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

「ゴースト・イン・ザ・シェル」より。 ©MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

──ちなみに遠未来ものの小説ですと、どのあたりの作家がお好きなんでしょう?

ブライアン・W・オールディスの「地球の長い午後」は好きですね。一番好きな作家はグレゴリー・ベンフォードなんですけど、これもすごく遠い未来の話なんです。話自体は全然面白くないんですけど(笑)、設定がすごくて。基本的に設定の面白い作品が好きですね。