コミックナタリー Power Push - 「僕だけがいない街」9巻

「僕だけがいない街」9巻

悟が命懸けで守った、大切な人々との絆を描く外伝集
三部けいが雛月、賢也、佐知子、愛梨への思いを語る

「僕だけがいない街」9巻が2月4日に発売される。時間が遡る現象・リバイバルを繰り返しながら、連続誘拐殺人事件の解決に挑む悟の物語は8巻にて幕を閉じた。最新巻では物語の裏で悟を支え、それぞれの戦いを繰り広げていたサブキャラクターたちのエピソードが描かれている。

この外伝集をもって「僕だけがいない街」は最終巻となり、真の意味での完結を迎える。コミックナタリーでは作者の三部けいにメールインタビューを行い、9巻の見どころと作品を完結させた現在の心境を聞いた。また最新巻の各話紹介と試し読みもお届けする。

構成・文 / 淵上龍一

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三部けい「僕だけがいない街(9)」
2017年2月4日発売 / KADOKAWA
「僕だけがいない街(9)」
コミック / 626円
Kindle版 / 626円
あらすじ

ケンヤ、アイリ、佐知子、そして雛月……悟が“時”を賭けて奔走していたその裏で、悟の周りにいた彼・彼女らは何を考え、何を思っていたのか? 本編に描き切れなかった悟と仲間の“絆”を描く三部けい渾身の外伝!

三部けい「僕だけがいない街(1)」
発売中 / KADOKAWA
「僕だけがいない街(1)」
コミック / 605円
Kindle版 / 560円
あらすじ

毎日を懊悩して暮らす青年漫画家の藤沼。ただ彼には、彼にしか起きない特別な症状を持ち合わせていた。それは……時間が巻き戻るということ! この現象、藤沼にもたらすものは輝く未来? それとも…。

三部けい先生へ10の質問

  • 単行本8巻にて物語の幕は閉じましたが、サブキャラクターにスポットを当てた外伝エピソードが最終9巻という形で2月4日に発売されます。このシリーズを描こうと思ったきっかけは?

    悟が「大リバイバル」で1度失敗するのは当初から決まっていました。その後どうするかという所で、何度も「大リバイバル」を繰り返すのはストーリーがダレるのであと1回にしようと。すると2度目の後にしか入れようのない、元々用意していたエピソードは絞り込むほかなくなってしまい、描きたくとも本編に使えないものがいくつも残りました。それが決まった時点で「外伝」的な物を描こうかという話は(編集)担当氏との間で出ていました。

    「大リバイバル」で雛月を救えず、失意のまま2006年に戻ってきた悟。

    「大リバイバル」で雛月を救えず、失意のまま2006年に戻ってきた悟。

  • 9巻では雛月、賢也、母・佐知子、愛梨という4名のエピソードが披露されました。各キャラクターへの思い入れと、番外編のエピソードを描いた理由を1人ずつ教えてください。

    雛月
    単行本9巻収録「雛月加代」より。
    雛月、佐知子、愛梨は皆、自分の中ではメインのヒロインという感じです。中でも雛月はアイコン的な役割を果たしてくれたこともあり、「空白の時間」のことを読者さんに伝えたいと思っていました。作中最もつらい目に遭う子なので最後は絶対幸せな姿を描くと決めていました。
    賢也
    単行本9巻収録「小林賢也」前編より。
    4人に共通していることですが、誰も1人で生きていっている訳ではないということも描きたかったテーマのひとつです。必ず誰かの言葉や行動がつらいときの助けになるし、そういう刺激があって初めて人は成長していくのではと。賢也は1人でも生きていけるけど、家族や友人の影響で「愛される人物」になってほしいという思いがありました。
    佐知子
    単行本9巻収録「藤沼佐知子」より。
    このエピソードは「外伝」が頭をよぎった時にすぐプロットが出来ました。本編で佐知子に関しての重要なエピソードはほとんど描くだろうと思っていたので、悟に対する佐知子の根本的な部分を見せられたらと。悟が母からどれほど影響を受けているか、とかですね。「理想の母親」の姿のひとつです。
    愛梨
    単行本9巻収録「片桐愛梨」より。
    ひとりですべて背負おうとしていた悟が「自分を信じてくれる人」を意識するようになるキッカケであり、最初の人です。事件解決後にはほぼ悟と関わりのない人になってしまうので、ラストで悟と出会う日1日だけの軽めの話にしようと。目線だけ逆にしてもう1度ラストを描きたいと思って描きました。
  • 9巻に入れられなかったけれども、番外編を描くか迷ったキャラなどはいますか? もう1名描くとしたら誰を選び、どんなエピソードにしますか?

    「ワンダーガイ」のストーリーを入れる予定でした。悟の人生とかなりリンクしている話だったのですが、「外伝」で削るなら当然本編と似ているこのエピソードだということで。

    単行本8巻収録の第44話「僕だけがいない街」より「ワンダーガイ」に対する思いを悟が書いた作文。

    単行本8巻収録の第44話「僕だけがいない街」より「ワンダーガイ」に対する思いを悟が書いた作文。

  • 使う機会がなかったけれども、用意していた隠し設定やエピソードなどがあるキャラはいますか?

    細かい部分では「有り」ますが、披露する程のものはありません。

  • ヒロイン・雛月の口癖「バカなの?」は、ファンの間でも人気のセリフです。このセリフはどのように生まれたのでしょうか?(※本特集P2では、劇中で雛月が「バカなの?」と言った回数をカウント)

    子供らしい言葉で短く、ストレートに。1回描いたときから何度も使うだろうと思っていました。

    単行本2巻収録の第7話「失われた時間」より。初めて雛月の「バカなの?」が登場したシーン。

    単行本2巻収録の第7話「失われた時間」より。初めて雛月の「バカなの?」が登場したシーン。

  • 主人公・悟は、たまに思っていることが声に漏れてしまうことがあります。この「声に出てた」という癖は、どのように生まれたのでしょうか?(※本特集の次のページでは、劇中で悟の「声に出てた」が登場した回数をカウントしている。)

    29歳悟の思いを子供悟に言わせるために考えました。シリアスな場面では「声に出てた」を使っていないだけで何度もそうなっています。

    単行本2巻収録の第7話「失われた時間」より。初めて悟の「声に出てた」が登場したシーン。

    単行本2巻収録の第7話「失われた時間」より。初めて悟の「声に出てた」が登場したシーン。

  • 三部先生ご自身は「この作品は自分の代表作となる」というような手応えを連載初期から感じていましたか? もしくは、このあたりから作品がノッてきたというような、ターニングポイントはありましたか?

    第1巻のラストが決まった時点(3話目を描いた頃)で自分の中では手応えを感じていました。売れる売れないは正直一切考えていませんでした。ノッてきた感は4、5話目のスピート感を自分で感じた頃からです。

    単行本1巻のラストより。悟が、リバイバルで自分が昭和63年まで時を遡ったことに気が付く重要なシーン。

    単行本1巻のラストより。悟が、リバイバルで自分が昭和63年まで時を遡ったことに気が付く重要なシーン。

  • 一番こだわったシーン、力を入れたエピソードは?

    すべてのシーンにこだわったつもりですが、#32「蜘蛛の糸」だけあえて「僕街」の演出方法から外して描きました。犯罪者側の心理をすべて「納得」させることは出来ないですし、そのつもりも無かったので「想像する余地」を多く残す作りにしました。

    単行本6巻の第32話「蜘蛛の糸」より。犯人の視点から、彼が誘拐殺人をするようになった経緯が明かされる異色のエピソードだ。

    単行本6巻の第32話「蜘蛛の糸」より。犯人の視点から、彼が誘拐殺人をするようになった経緯が明かされる異色のエピソードだ。

  • 描くのが楽しかったシーン、逆につらかったシーンは?

    楽しかったのはバスでの平和な時間です。つらかったのは子供がつらい目に遭うシーンすべてです。が、それでも自分はフラットに描ける方だと、自己評価としては思っていますが(笑)。

    単行本4巻収録の第22話「カクレガ」より。雛月を虐待から守るため家から離れさせ、使われなくなったバスの中に隠すシーン。恐怖から解放され、悟たちは平和で幸せなひと時を味わう。

    単行本4巻収録の第22話「カクレガ」より。雛月を虐待から守るため家から離れさせ、使われなくなったバスの中に隠すシーン。恐怖から解放され、悟たちは平和で幸せなひと時を味わう。

  • この9巻で「僕だけがいない街」は最終巻となります。描き切ってのご心境は? また、先生ご自身にとって本作は、どのような作品でしたか?

    読者様、関係者の皆様のおかげで描きたいことはすべて描ききれたと思っています。この作品はそのすべての皆様によって自分を育ててくれた作品だと感じています。本当に感謝の言葉しかありません。皆様ありがとうございました!